辺野古反対リーダー「長期勾留は不当」

 

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山城博治沖縄平和運動センター議長

 

2017年1月12日、山城博治さんら沖縄の基地反対運動のリーダーが、こじつけとしか思えない理由で不当に逮捕・長期勾留されているとして、ルポライターの鎌田慧さん、作家の澤地久枝さん、落合恵子さん、評論家の佐高信さん、脚本家の小山内美江子さんら5人の文化人グループが東京・参議院議員会館で記者会見し、早期釈放を訴えた。

 

 会見には300人以上が参加し、「政治弾圧をやめよ」などと主張した。

 

基地反対運動の人々は、「これ以上、米軍施設はいらない」「ふるさとの自然を守りたい」「普通のくらしを守りたい」という当たり前の思いで、辺野古や高江で必死の座り込みを続けている。座り込みは、「非暴力で」「自主的に」「愛と ユーモアを」のガイドラインが徹底され、強制排除にあっても、住民側にケガ人は続出したが、機動隊側を誰一人傷つけることはない。

 

勾留されているのは、米軍普天間飛行場の移設作業が進む沖縄県名護市辺野古や、東村高江のヘリパッド建設現場などで抗議行動をとりまとめてきた山城博治・沖縄平和運動センター議長(64)ら。

 

不当に逮捕され反対運動のリーダーたちの逮捕理由が次々と切り替わり、長期に拘留されている。沖縄県警は2016年10月17日、沖縄防衛局が設置した有刺鉄線2カ所を切断したとして、山城議長を器物損壊容疑で現行犯逮捕。那覇簡裁は20日に勾留請求を却下したが、県警は同日夕に別件の傷害容疑などで再逮捕。その後、那覇地裁が器物損壊容疑での勾留を認めた。

 

さらに、県警は2016年1月28日から30日にかけて、辺野古・キャンプシュワブのゲート前にブロックを積み上げて工事車両の通行を邪魔したとする威力業務妨害容疑で、11月に再び逮捕した。10ヶ月も前に行われた抗議行動である。そのとき警察は、その場にいて、見ていたにもかかわらず、何の行動も起こしていなかったのである。

 

山城さんの勾留はすでに約3カ月に及んでいる。こうした状況下で元裁判官や元国会議員らでつくる文化人グループは、逮捕・長期勾留は「反対運動をつぶすためのものだ」として、賛同した66カ国からの約1万6千筆の署名を那覇地裁に提出し、勾留をやめるよう求めた。

 

 会見で鎌田さんは「長期勾留で微罪を大きな罪に見せようとしている。これを許すと今後の大衆運動に影響がある」と、佐高さんは「憲法を踏みにじるアベと沖縄を弾圧するアベは同じ。そこどけそこどけ国家が通る、だ」と指摘した。

 

落合さんは「全国紙の記者がいたら、沖縄の問題は私たちの問題として捉えてくださることを心から願います」と訴えたうえで、「あす同じ事が、ここにいるどなたにも起きる」。落合さんが締めくくると会場は静まり返った。

 

  集会では、沖縄県名護市辺野古の基地建設現場そばから市民団体メンバーが携帯電話で現状を報告。「山城さんは大病(悪性リンパ腫)を患った後で、体調も心配。勾留は、私たち沖縄県民の当然の権利行使である抗議行動をつぶすものだ」と強調した。

 

日本国際法律家協会は、山城氏らの逮捕拘束は世界人権宣言9条に違反すると指摘している。同9条は「何人も恣意的に逮捕、拘禁、または追放されることはない」と明記している。日本国憲法31条で規定されている「適正手続きの保障」にも違反する。

 

 なお、山城さんはリンパのガンである「悪性リンパ腫」の持病を抱える。弁護士でもある福島瑞穂参院議員は12月20日に接見。「山城さんは白血球の数が減っている。ヒゲをカミソリで剃ると血が止まらなくなると医師から注意されたそうだ。『ヒゲぼうぼうでゴメンね』と山城さんは言った」という。

 

 県警は「法と証拠に基づいて適切に対処したもので、『基地反対運動を阻害する』などの意図はありません」とコメントしている。

 

文化人グループは、1月17日、早期釈放を求める約4万人分の署名を那覇地裁に提出した。

 署名を提出した元裁判官の仲宗根(なかそね)勇さん(76)は、逃亡の恐れなど刑事訴訟法で定める勾留理由は見当たらず、釈放すべきだと主張。「新基地建設に反対する県民の闘いを押しつぶそうとする国策勾留だ」と訴えた。

 

 明治大学特任教授で、米ワシントン州弁護士のローレンス・レペタ氏が琉球新報の取材に応じ(1月18日付け)、名護市辺野古の新基地建設現場と東村高江のヘリパッド建設現場での行為を巡り、逮捕・起訴された山城博治沖縄平和運動センター議長の長期拘束について「国際人権法に反する」と指摘した。

 山城議長の拘束を認めている裁判所に対しても保釈を求めた上で「山城議長の長期勾留は日本の裁判制度の国際的な評判にまた傷を付けている」と述べ、対応を疑問視した。

 ローレンス氏は情報公開制度を武器に米政府の秘密主義に挑戦する人々を著書などで紹介してきた。

 そのほか、日本の裁判の傍聴人が法廷でメモを取ることの許可を求めたが認められなかったため、国家賠償法に基づき損害賠償を求めた事件の原告としても著名。

 

明治大特任教授のローレンス・レペタ氏=1月13日都内

 

 山城さんの早期釈放を求め、ルポライターの鎌田慧さんらは1月20日、那覇地裁に保釈や接見制限の解消を要求する要請書とインターネットでの呼び掛けを中心に、60カ国以上から計約1万8千人分の署名を提出した。

 鎌田さんは要請後の記者会見で「軍事国家による、平和運動への弾圧が始まっている。山城氏は政治犯として逮捕されたと思う」と訴えた。

 

逮捕・起訴され、勾留が3カ月以上続く山城博治沖縄平和運動センター議長ら3人の釈放を求める支援者らは2月10日、那覇地裁前で抗議行動し、「弾圧をやめろ」「裁判所は人権を守れ」と声を上げた。

 支援者らは2月からほぼ毎日、午前9時から午後5時まで地裁前に立ち、「山城議長を直ちに釈放せよ」「裁判官の誇りをみせて」などのプラカードを掲げ、釈放を訴えている。数人の時もあるが、約60人が集まる時間帯もあるという。

 うるま市具志川9条の会の宮城英和事務局長は「建設反対の現場責任者を狙った不当な弾圧。現政権が運動を諦めさせようとしても、県民は決して屈しない。一刻も早く3人を釈放すべきだ」と憤った。

 山城議長の家族の女性は「家族も接見できず、差し入れは1日1回しか認められない。思うように動き回れないと思うので体調が気掛かり」と心配しながらも、「県外・国外にも支援が広がっていることが心強い」と話した。

 照屋寛徳衆院議員が8日に接見した際、山城議長への手紙形式で書かれた7日付の沖縄タイムス社説を差し入れると、涙ぐんで読んでいたという。

 本を差し入れた宜野湾市の伊佐笑子さん70は大統領令に裁判所が異を唱える米国を例に挙げ、「日本の司法も三権分立を示してほしい」とし、「彼のようなリーダーはほかにいない。一日も早く仲間のところに戻ってきてほしい」と語った(2017年2月11日配信『沖縄タイムス』)

 

 

山城博治議長らの早期釈放や名護市辺野古への新基地建設反対を訴えようと、読谷村民を中心とする有志8人は12日、北谷町の観覧車前広場で「マネキンフラッシュモブ」を実施した。黒服姿に身を包み、マネキンを装った参加者たちは「不当な長期勾留ヤメテ」など手作りのプラカードを片手に、数分間静止。無言の訴えを約1時間続けた。

 

 

 計画立案者の富樫守さん(74)は、辺野古での座り込みを通じて山城さんと出会った。「県外の人や若者たちにも、こうした不当な勾留があると知ってもらいたい」と、同じく座り込みに参加する知人に声を掛け、有志が集まった。「マネキン―」という新しい形の抗議活動に、より効果的で、注目が集まる方法はないかと考え、場所や日時にもこだわり「家族連れや観光客、若者が多い日曜日を選んだ」と説明した(2017年2月14日配信『沖縄タイムス』)

 

 勾留中の沖縄平和運動センター山城博治議長(64)について、最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)は、2月20日付で「(憲法や最高裁判例に反する場合にだけ認められる)特別抗告申し立ての理由に当たらない」と指摘。勾留継続は憲法に違反しないと判断。保釈を認めない決定を出した。

 最高裁が弁護側の特別抗告を棄却するのは今回が3回目で、保釈に関しては初めて。これまで2回は接見禁止に関してであった。

 弁護側は2月8日、山城議長の保釈を那覇地裁に請求したが、却下された。弁護側は同地裁に不服を申し立てたが棄却されたため、13日付で最高裁に特別抗告していた。

 弁護側の池宮城紀夫弁護士は「人権の最後の砦(とりで)とされる最高裁が、自らの責務を放棄した」と批判した。弁護側はこれまで15回以上、山城議長の保釈や家族との接見を認めるよう地裁に求めたが、全て退けられている。

 

この事件では、政治弾圧だとして、市民団体や沖縄県選出の国会議員のほか、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルも釈放を求めている。

 

反対派リーダー保釈 拘束5カ月

 

 

 

 

約5カ月の勾留後、保釈が決まり那覇拘置支所を出た山城さん=那覇市で2017年3月18日午後8時過ぎ

 

約5カ月勾留が続いていた沖縄平和運動センター議長、山城博治さん(64)が3月18日夜、保釈された。福岡高裁那覇支部が18日、保釈を認めた那覇地裁決定(17日)を支持し、那覇地検の抗告を棄却した。

山城さん告は沖縄の反基地運動のリーダー。2016年10月の逮捕から約5カ月にわたって勾留が続き、移設反対派や国際人権団体などが早期釈放を求めるなど批判が広がっていた。

3月17日の初公判で山城さんは、3件の起訴内容のうち威力業務妨害罪と公務執行妨害・傷害罪の2件について無罪を主張。このうち勾留の対象となっていた公務執行妨害・傷害罪について、那覇地裁が同日に保釈を認めたが、那覇地検が決定を不服として福岡高裁那覇支部に抗告していた。

山城さんは18日夜に那覇拘置支所を出て、詰めかけた多くの支援者に拍手で迎えられた。那覇市内で記者会見し「5カ月にわたる勾留は不当な弾圧だ。裁判では無実と沖縄の正義を訴えていきたい」と述べた。

多見谷裁判長は棄却の理由について「公判前整理手続きが終わり、罪証隠滅の恐れは低くなっている」とし、「(山城議長に)刑罰を受けた過去はなく、長期勾留で健康状態の悪化が懸念されている」とした。

山城議長は拘置支所前に集まった約150人の支援者らに「これから何カ月かかるか分からないが、皆さんと一緒に公判で無罪を勝ち取ろう」と涙ながらに話した。

弁護側の金高望弁護士は保釈後の記者会見で「裁判所が保釈を認めたことには感謝したいが、遅すぎる」と指摘。「初公判が終わったこの期に及んで、不服を申し立てる検察側の執拗(しつよう)な態度には憤りを禁じ得ない」と地検を批判した。

一方、「保釈決定には事件関係者との面会を禁じる条件が付いている」と明らかにし、関係者と接触する可能性がある抗議活動には「参加を自重せざるを得ない」と述べた。

弁護側は17日、公務執行妨害と傷害両罪で計12回目の保釈を地裁に請求。地裁は同日夜に保釈を認めたが、地検が決定を不服として高裁那覇支部に抗告していた。高裁那覇支部は18日、接見禁止の延長を求めた地検の抗告も棄却した。

 

しかし、もうひとり那覇拘置所にいる添田充啓さんは、山城さんより先の10月4日から勾留が続いている。

 

山城博治議長の記者会見での発言(要旨)は次の通り。

 

 県内の多くの仲間、全国や海外からもたくさんの支援があった。お世話になりました。ありがとうございました。

 5カ月に及ぶ勾留だったが、今日、勢ぞろいしていただいた弁護団に激励をもらいながら、いつも気持ちを整理し、日々を送っていた。

 午後6時半ごろ、係官から「正式じゃないが、今日釈放があるかもしれない」と知らせを受けた。地検の態度が厳しく、裁判が一通り落ち着く8〜9月ごろまで、この場所で頑張らないといけないという思いがあったので、夢のようでうれしい。

 今朝初めて接見解除という措置をもらった。これまで名護署や拘置所に寄せられた、たくさんの激励や便りを見ることができず、今日初めて目にした。400通を超える激励が県内外からあり、終日目を通して、なちぶさー(泣き虫)博治は感激にむせびながら、ハンカチをぬらし、帰りを夢みていた。

今一番したいことは、健康の確認。主治医に何カ月も会ってないので、まずは診断もしてもらい、長くなるであろう裁判に集中したい。運動にも最大限、関われる分は関わりたいが、釈放にはたくさんの条件が付いている。  

今後、細かいところは弁護団と調整しながら、可能な限り声を上げていきたい。初公判でも述べた通り、私たちは県民の意を体して、沖縄の長い歴史を踏まえて、戦争の道を再び歩ませない。「命どぅ宝」をこれからも大事にして生きると裁判で述べてきた。この思いを果たすまで、裁判を頑張り抜く。

 私たちにかけられている容疑は、広く言えば県民に対する弾圧、県民の思いを踏みにじる行為でもある。長い闘争になると思うが、無実と無罪、沖縄の正義を訴えて頑張りたい。

 

山城博治議長が、2017年6月中旬にスイスのジュネーブで開かれる国連の人権理事会で、沖縄で表現の自由が侵害されている実態などについて発言する方向で調整している。15日にも理事会出席を裁判所に申請する。2016年4月に来日した、表現の自由に関する特別報告者デイビッド・ケイ氏が人権理事会へ日本に関する報告を出すのに合わせて証言する。

 スピーチは約2分間。山城議長は「人権を無視し、基地建設を強行する政府を止めるためにも、私が受けた逮捕、拘束は政府による不当な弾圧であることを訴えたい。また日本国内では報道の自由も侵害されている現状も併せて話したい」と語った。

 沖縄国際人権法研究会(島袋純、星野英一共同座長)がケイ氏に働き掛けていた。

 山城議長の報告と併せて沖縄国際人権法研は複数の非政府組織(NGO)と共に、沖縄で表現・報道の自由が侵害されていることを訴えるシンポジウムを同じジュネーブで開催することも計画している。

 

 

沖縄の山城議長勾留 元高裁判事も疑問 「基地反対への弾圧」(2017年2月11日配信『東京新聞』)

 

 

 沖縄県で米軍基地建設に反対する抗議行動に絡んで逮捕、起訴された沖縄平和運動センターの山城博治(ひろじ)議長(64)の勾留が4カ月近くになった。保釈が認められやすくなる中、「人質司法」と批判する声も上がる。勾留を決めるのは警察でも検察でもなく、裁判所。元東京高裁裁判長の木谷(きたに)明弁護士(79)は本紙の取材に「ここまで身柄を拘束する事案とは思えない。基地反対運動に対する弾圧と言われても仕方ない」などと元判事の視点から疑問を呈した。

 「裁判官は、検察官の主張に乗せられてしまいがちだ」。木谷さんは古巣についてこう嘆く。検察は勾留が必要な理由を書いた書類や資料を裁判所に提出し、裁判所が判断する。自身は東京高裁裁判長だった2000年、東京電力女性社員殺害事件で、東京地裁で無罪判決を受けたネパール人男性について、控訴した検察側の勾留要請を退けた経験を持つ。後に別の裁判長が勾留を認めたが、男性は12年に無罪が確定した。

 山城議長は16年10〜11月、沖縄防衛局職員の腕をつかんでけがを負わせたとする傷害などの容疑で3回逮捕され、他の2人とともに勾留が続く。那覇地裁は「証拠隠滅の恐れがある」として保釈を認めず、弁護士以外との面会を制限している。木谷さんは「厳しすぎる。精神的な支援を遮断して自白を迫る『人質司法』の手法だ」と指摘する。

 逮捕当初の勾留については「抗議行動の仲間に虚偽の証言をさせる可能性などから必要はあったかもしれない」とする一方、100日を超える勾留には「説得力がない」と言い切る。事件の現場には、いずれも周りに大勢の人がいた。「目撃者が多く、客観的な証拠は集まったはずだ。今更、口裏合わせもできないだろう」

 最近では、保釈を認めたり、検察側の勾留請求を却下したりする割合が高まっている。最高裁によると、保釈率は06年の13・9%から15年は25・7%へ、勾留請求却下率は06年の0・7%から15年には3・36%へ大幅に上がった。

 木谷さんは言う。「重大事件でもないのに、いつまでも勾留しておくような判断は残念だ」

 

<勾留> 逮捕された容疑者や起訴された被告の身柄を警察署や拘置所などの施設に収容し、拘束する処分。刑事訴訟法で規定している。罪を犯したことが疑われ、証拠隠滅や逃亡の恐れがあるなどの理由が必要で、裁判所が決定する。逮捕後の期間は10日で例外的な罪を除き、さらに最大10日延長できる。起訴後の期間は2カ月で、必要性が認められる場合は1カ月ずつ更新できる。被告や弁護人らは保証金の納付を条件に拘束を解く「保釈」を請求でき、裁判所は証拠隠滅の恐れなどがない場合は認めなければならない。

 

<きたに・あきら> 1937年、神奈川県生まれ。東京大法学部卒。東京、名古屋両地裁判事、最高裁調査官、水戸地裁所長などを歴任。2000年に東京高裁判事部総括で退官後、公証人を経て04年から法政大法科大学院教授。12年に退職、弁護士登録。刑事裁判で数々の無罪判決を出したことで知られる。

 

 

「山城博治さんたちの早期釈放を求める会』趣意書

 

山城博治さんが2016年10月17日、高江のオスプレイヘリバッド建設現場で有刺鉄線を切断したとして器物損壊容疑で逮捕されてから、はや70余日が経過しました。

この間、沖縄県警は、山城博治さんたち7名を次々と公務執行妨害、傷害、威力業務妨害などの容疑で逮捕し、 うち4名は保釈されたものの、今なお山城博治さんを含む3名が起訴され、長期勾留を強いられています。tノかも、山城博治さんには接見禁止がついていて、弁護士以外は接見できず、家族も会えないというひどい扱いを受けています。

これらの逮捕は、いずれも不当極まりないものであり、市民による抗議運動の高揚に恐れをなした安倍政権の差し金による高江。辺野古の運動潰しにほかなりません。

不当勾留されている3名とも、連日の長時間に及ぶ取り調べにかかわらず、不屈に闘い続けていることはいうまでもありません。

ただ、ここで私たちが何より懸念しているのは、長期勾留による3名の健康状態であります。なかでも、山城博治さんは、2015年に大病を患い、現在もその影響で決して健康な身体であるとはいえません。現に12月19日の血液検査で白血球値がぎりぎりまで下がつていることが医師から告げられ、家族をはじめ友人、知人が憂慮しているところであります。また、山城博治さんは、末端冷え症で手足が冷たくなりやすい体質のため、これからの季節がよリー層健康に悪影響を及ぼしかねません。これ以上の勾留は、山城博治さんの生命を危険にさらすことになりかねません。

このような状況で、私たちは取り調べ期日が終える12月20日を藁にもすがる思いで待ちました。なぜなら、通常通りであれば取り調べ期日が終われば当然釈放されるものだと思っていたからです。

ところが、私たちの期待も空しく、今なお裁判所は釈放を認めようとしていません。裁判所は、検察の山城博治さんたちを社会に帰さない、運動させないという強い意向の前に、自らの良識をかなぐり捨て、人権を尊重するという本来の責務を放棄したと断ぜざるを得ません。

よって、私たちは、沖縄のすべての人々、全国の良識ある人々に広く呼びかけ、山城博治さんたちの一亥Jも早い釈放を勝ち取るための運動を展開していきたいと思っております。この趣旨をくみ取り、一人でも多くの方がご支援。ご協力を賜りますよう心からお願い申し上げます。

 

平和市民連絡会

山内徳信、崎原盛秀、伊波義安、仲宗根勇、新川秀清、東門美津子、平良員知

 

 

山城博治さんの速やかな釈放を求める(アムネスティ・インターナショナル日本支部声明)

 

2017年1月27日

沖縄平和運動センターの山城博治さんが公務執行妨害などの罪に問われ、昨年10月17日に逮捕されて以来100日を超える。アムネスティ・インターナショナル日本は、山城さんの勾留が長期に及んでいることに強い懸念を表明する。山城さんは直ちに釈放されるべきである。

山城さんは2016年10月17日、沖縄県の米軍北部訓練場において、有刺鉄線を1本切ったとして器物損壊容疑で逮捕された。同20日に勾留が決定、同時に公務執行妨害と傷害の容疑で再逮捕された。現在、山城さんは、3つの罪で逮捕・起訴されている。当局は、軽微な犯罪での逮捕・勾留・起訴を繰り返している。勾留のためには証拠隠滅の恐れがあるなど必要な要件はあるが、上記の罪の証拠に関して隠滅の可能性は極めて低く、その他の要件についても該当する理由はない。国際人権基準は、公判前に釈放することを前提としており、このような拘禁は身体の自由への侵害である。

 さらに、山城さんは、家族とも面会できない状態が続いている。被拘禁者処遇最低基準規則(マンデラルール)は、定期的に家族および友人の訪問を受けることが許されなければならないとしている(58条1項)。山城さんは、2015年の大病からは回復したものの体調が心配されており、家族の訪問は保障されるべきである。

 山城さんは、沖縄における米軍基地反対運動のリーダーとして、政治信条に基づいて長年にわたって活動してきた。沖縄は、日本における米軍基地の7割が集中する地域であり、基地に関わる問題には、常に政治的な文脈が影響している。今回の逮捕と長期拘禁は、そうした影響の表れであって、日本政府による沖縄米軍基地反対運動の抑圧とも指摘されている。アムネスティ日本は、デモや座り込みを含む抗議行動を表現の自由として保障する義務を日本政府が負っていることを想起させ、山城さんの逮捕・拘禁が運動への委縮効果を生むおそれがあることに懸念を表明する。

 国際社会は、政府による抑圧を防ぐため数々の努力を重ね、自由権規約や被拘禁者処遇最低基準規則、ならびに保護原則を作り上げてきた。日本政府は、こうした国際人権基準を遵守すべきである。

 アムネスティは、表現、結社、集会の自由の権利を尊重し保障するよう日本政府に求めるとともに、国際人権基準に則って山城さんを速やかに釈放するよう検察当局に強く求める。また、アムネスティは、山城さんが釈放されるまでの間に家族に会えること、必要な医療を受けることができることを求め、国際的な行動を展開する。

 

以上

 

 

政府の圧力「市民にも」 人権シンポで山城さんが警告(2017年6月17日配信『東京新聞』)

  

スイスのジュネーブで開催中の国連人権理事会で、日本の表現の自由に対する政府の圧力について懸念を報告したデービッド・ケイ特別報告者と、沖縄の米軍基地移設への抗議活動で長期勾留された沖縄平和運動センターの山城博治(ひろじ)議長らが16日、国連施設で開かれたシンポジウムに参加した。

 シンポジウムは山城さんを招いたNGO「反差別国際運動」(本部・東京都中央区)などが主催。

 山城さんは当局が設置した有刺鉄線つきフェンスを切断するなどの微罪で5カ月勾留され、家族や仲間との接見を許されなかった体験を紹介。「仲間や私に加えられた圧力が一般の市民に加えられかねない」と述べ、政府による過度の圧力を抑制するため国際社会の監視を呼び掛けた。

 ケイ氏は「沖縄で基地反対運動をしている人に表現の場を与え、彼らを悪者にしないでほしい」と訴えた。

 東京の国会周辺で実施される大規模な抗議デモを挙げ「日本では表現の場が与えられているが、沖縄は違う」と発言。沖縄のように基地建設を巡る論争が激しい場所でも、表現の自由を与えるべきだと発言した。

 同シンポに参加した琉球新報社の島袋良太記者は、米軍ヘリパッド建設現場の抗議活動を取材していた記者が警察によって15分間、狭い場所に閉じ込められた事例を紹介した。

 

「沖縄のデモ規制、最小限に」デービッド・ケイ氏が国連報告(2017年6月13日配信『沖縄タイムス』)

 

 国連の表現の自由に関する特別報告者、デービッド・ケイ氏が12日午後(日本時間同日深夜)、スイス・ジュネーブで開催中の国連人権理事会に対日調査報告書を提出した。約16分の演説の中で沖縄にも触れ、「特に(基地問題の)大きな議論がある沖縄のような場所では、デモは最小限で釣り合いの取れた規制にとどめるべきだ」と、当局に慎重な対応を求めた。

 特別報告者は人権理事会に任命され、特定の分野について調査、勧告する専門家。ケイ氏は2016年4月に来日し、政府と非政府組織(NGO)の双方から表現の自由について話を聞いた。

 ことし5月に公表された報告書は、「沖縄の抗議行動に加えられている圧力を特に懸念している」と指摘。「不均衡な重い罰を科すなど、抗議参加者を公に悪者扱いすることは、日本人全てが享受する異議申し立ての基本的な自由をむしばむ」と表明した。

 特に沖縄平和運動センターの山城博治議長の長期勾留について「抗議行動を萎縮させる懸念がある」と言及していた。

 ケイ氏はこの日の報告で、特定秘密保護法の下でも情報公開を保障することや、放送免許停止などの監督権限を独立機関に移すことも提案した。

 日本の伊原純一大使は同日、報告書に対して「一部は日本政府の見解や立場を正確に理解せずに書かれており遺憾だ」と表明。「表現の自由を民主主義の基礎として非常に重視している」「ジャーナリストに違法で間違った圧力をかけた事実はない」などと反論した。

 ケイ氏はカリフォルニア大学アーバイン校の教授で、国際人権法が専門。14年から特別報告者を務めている。

 

山城議長長期拘束は「人権法上問題」 国連報告者ら是正を求める(2017年5月28日配信『東京新聞』)

  

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設などへの抗議活動に伴い逮捕された沖縄平和運動センターの山城博治(やましろひろじ)議長(64)=傷害罪などで公判中=に関し、国連の特別報告者ら4人が2月末、長期拘束などには国際人権法上問題があるとして日本政府に速やかな是正を求めていたことが分かった。国連人権高等弁務官事務所が26日、4人の緊急共同アピールを公表した。

 山城議長は、米軍北部訓練場のヘリコプター離着陸帯建設の抗議活動に伴って有刺鉄線を切断した器物損壊容疑で昨年10月に逮捕され、約5カ月拘束された後、3月18日に保釈された。人権団体は「アピールが圧力になった可能性がある」と指摘している。

 緊急アピールは2月28日付で、国際人権法や国際人道法の専門家であるデービッド・ケイ氏(米国)ら4人の連名。山城議長の活動は人権を守る行為と考えられるとして逮捕や長期勾留、容疑に懸念を示し、日本の表現や平和的な集会の自由への「萎縮」効果も懸念されると指摘した。

 また、長期の拘束などに関連して「適切な法的手続きの欠如」を指摘する声があるとし、独立した公正な裁判の前に自由を制限されない権利を保障するべきだと日本政府に訴えている。

 一方、日本政府は4月10日にジュネーブの国際機関代表部を通してアピールへの回答を送付。法的手続きは適正で国際人権法上も問題はないと反論していた。

 山城議長の支援者らは27日、「政府は謙虚に受け止めるべきだ」と主張。弁護人の池宮城紀夫(いけみやぎとしお)氏(77)は「辺野古での抗議は、最低限の抵抗権を行使したもの。弾圧のために微罪で逮捕するのは当然、人権侵害だ」と訴えた。

 日本政府の回答について沖縄平和運動センターの大城悟(おおしろさとる)事務局長(53)は「政府はとにかく、主張を正当化しようとする」と批判した。

 

「長期勾留は不当な国策」 辺野古反対運動・山城議長インタビュー(2017年4月16日配信『東京新聞』)

  

 米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古(へのこ)への移設に反対する市民運動のリーダー的存在で、抗議行動中に逮捕され五カ月にわたり勾留された沖縄平和運動センターの山城博治(ひろじ)議長(64)=威力業務妨害罪などで公判中=が、那覇市内の法律事務所で本紙の取材に応じ、「長期勾留は沖縄の大衆運動を取り締まる不当な国策捜査だ」と訴えた。

 二〇〇四年から反対運動を続けてきた。一五年十一月に警視庁の機動隊が派遣されると、排除行動は「相手が女性や高齢者でも見境なく力任せになった」。自身も、政府が県北部の米軍ヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)の完成を急いだ昨年十月、器物損壊容疑で逮捕された。

 その後、今年三月に保釈されるまで身柄を拘束され続けた。この間、辺野古の米軍キャンプ・シュワブのゲート前にブロックを積み工事車両の進行などを妨害した容疑などで二度、再逮捕。「警察の排除行動が激しくなり、生身の体では持たないと思った。やむにやまれず取った行動だ」

 検察の取り調べでは、黙秘権を主張したが、現場の映像を見せられ「隣の男は誰だ」「この人を知っているだろう」と再三、供述を迫られた。「共犯者を捜し出そうとしているように感じた」。一連の事件で逮捕者は八人に上った。

 検察官は「自由になったら、また現場に戻るのか」とも繰り返した。取り調べを振り返り、「リーダーと呼ばれる人間を屈服させ、同時にすべての関係者の連絡先を押さえる。沖縄の大衆運動そのものを取り締まっていく国策捜査だと思う」と話した。

 

阿部岳記者の視点[山城議長保釈]抵抗 県民の願い代弁(2017年3月19日配信『沖縄タイムス』)

 

 瀬長亀次郎氏が出て来た時もこうだったのだろうか。18日、那覇拘置支所前の群衆の中で、1956年の光景を想像した。

 瀬長氏は復帰前、絶対権力だった米軍と闘い、微罪で1年半投獄された。当時の沖縄刑務所は今の拘置支所のすぐ近く。出所した時、門の外にはやはり多くの市民がいた。笑顔で右手を高く挙げ、応える写真が残っている。

 山城博治議長の場合はどうか。市民が歌い出した。山城議長はカチャーシーを舞い始め、輪が広がった。

 それは辺野古や高江で山城議長が育ててきた運動の形だった。機動隊と激しく衝突する一方、歌や踊りを取り入れ、なるべく幅広い層が来られるように心掛けてきた。

 形は、山城議長が不在の5カ月間も引き継がれた。政府はリーダーを現場から引きはがして打撃を与えることには成功したが、市民はしぶとく抵抗を続けた。

 18日歌われた「今こそ立ち上がろう」は山城議長の作詞。「沖縄の未来(みち)は沖縄が拓(ひら)く」と始まる。歌も闘いも、県民の最低限の願いを代弁している。

 瀬長氏は「弾圧は抵抗を呼ぶ。抵抗は友を呼ぶ」という言葉を残した。その通り、瀬長氏の投獄は逆に市民の怒りに火を付け、米軍はついに沖縄占領を続けることを断念した。

 

勾留ありきの検察立証 森川恭剛教授琉球大(刑法)

 保釈は当然だ。人質に取られたままでは弁護人も裁判を争うこと自体が難しく、無罪を主張するほど勾留が長期化しないか不安だった。検察官の有罪立証に対する防御権がやっと保証された形だ。遅きに失したが、勾留の必要がないことを、裁判官が初公判でやっと理解できたということだ。勾留理由の「罪証隠滅の恐れ」は、単なる言い掛かりで職権乱用と言える。

 しかし、被告人であることから解放されたわけではない。行動の自由が制約され、キャンプ・シュワブのゲート前に立つことも禁じられているだろう。関連する集会参加などにも影響が及ぶかは不明だが、共犯とされる男性など、会える人物にも制限があるだろう。

 初公判を傍聴したが、検察の立証は勾留ありきで、時間稼ぎの人権侵害裁判だ。証拠のビデオ映像は公訴事実前のシーンに終始した。本気で有罪にしたいのか、とあきれる展開だった。検察官は直ちに起訴を取り消し、裁判所は訴訟手続きを打ち切るべきだ。

 

山城議長の勾留、米軍・星条旗紙も報道「海外に非難拡大」(2017年3月14日配信『沖縄タイムス』)

 

山城博治議長の長期勾留を報じている米軍準機関紙「星条旗」の紙面

山城博治議長の長期勾留を報じている米軍準機関紙「星条旗」の紙面

 

米軍準機関紙「星条旗」は13日、基地建設反対運動中に逮捕され、傷害などの罪に問われている沖縄平和運動センターの山城博治議長の長期勾留に対する非難が高まっており、即時釈放を求める連帯の輪が国際人権団体や海外にも拡大していると報じた。記事は沖縄発で、3ページ目の3分の2以上のスペースを割き、約5カ月に及ぶ流れを詳報している。

同紙は、昨年10月17日に約2千円相当のフェンスの有刺鉄線を切ったとして器物損壊容疑などで逮捕された山城氏が身体が冷え込む独房で勾留され、家族との面会や使い切りカイロの差し入れすら認められないなど、米国の基準からかけ離れた状況を描写した。

 山城氏の釈放を訴える支援者らが長期勾留の不当性を主張し、日本政府は山城氏を隔離することで基地反対運動を封じ込めようとしているなどと訴えていると指摘。昨年12月には、2週間で約4万1千筆もの署名が集まり、現在も毎朝、那覇地裁前に支援者が集まり、即時釈放を訴えていると強調。さらに「アムネスティ・インターナショナルのような国際人権団体も山城氏の即時釈放を訴え、抗議の輪は遠く離れたニューヨーク市にも広がっている」と指摘し、長期勾留に対する非難が高まっていると報じた。

 同紙は、米国務省に見解を求めたものの、コメントは得られなかったと伝えている。

 

 

山城氏証拠一部却下 人権理事国の司法なのか(2017年9月6日配信『琉球新報』−「社説」)

 

 司法の役割は人権の保障である。恣意(しい)的とも取れる対応はそれに明らかに反する。

 名護市辺野古の新基地建設に対する抗議活動で、威力業務妨害の罪に問われている沖縄平和運動センターの山城博治議長の弁護側の証拠請求を那覇地裁が一部却下した。

 請求が認められなかったのは、国連人権理事会が市民の抗議活動で許容される基準を定めたガイドライン(指針)や、山城議長の長期勾留などを批判した国連特別報告者のデービッド・ケイ氏の報告書などである。

 国際的な基準を明示したガイドラインを証拠採用しないことは、人権を守るべき司法の役割を放棄したに等しい。憂慮すべき事態である。

 ガイドラインの主な内容は(1)長期的な座り込みや場所の占拠も「集会」に位置付ける(2)座り込みなどによる交通の阻害は、救急車の通行といった基本的サービスや経済が深刻に阻害される場合以外は許容されなければならない(3)集会参加者に対する撮影・録画行為は萎縮効果をもたらす(4)力の行使は例外的でなければならない(5)集会による渋滞や商業活動への損害も許容されなくてはならない−である。

 これらに照らせば、新基地建設などに抗議する市民の活動は国際的にみて正当性がある。一方で、政府が東村高江や辺野古で行ってきた警備活動はガイドラインに反する。

 さらに、ガイドラインは抗議行動が法に抵触した場合でも「不相応な罰」を与えることを禁止している。那覇地裁が「不相応な罰」を否定するならば、ガイドラインを証拠採用すべきである。

 5カ月にわたり勾留された山城議長について、国連特別報告者のデービッド・ケイ氏は「不均衡な重い罪を科している」と指摘し、ガイドラインが各国政府に行わないよう求める「法の侵害に対する不相応な罰」に該当するとの懸念も示している。

 政府の対応は、人権を巡る国際的に確立された理念に明らかに反しているのである。山城議長の長期勾留を認めた司法も同様だ。司法に対する批判を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。不当な人権侵害を容認したため、証拠採用しなかったと言われても仕方あるまい。

 日本は国連人権理事会の理事国としての立場も考える必要がある。国内法の手続きに適切にのっとったとするだけではなく、国際社会の指摘を踏まえて対応する責任があることを自覚すべきだ。政府は昨年の理事国選挙で「特別報告者との有意義かつ建設的な対話の実現のため今後もしっかり協力していく」と公約したことを忘れてはならない。

 司法も人権理事国の司法にふさわしい在り方が求められている。政府に都合の悪い証拠を却下する姿勢は、司法の独立を大きく揺るがす。人権理事国の司法として疑問符が付く。政府寄りの姿勢を転換し、「人権の砦(とりで)」としての本来の役割を果たすべきだ。

 

辺野古人権侵害 過剰警備を直ちにやめよ(2017年8月10日配信『琉球新報』−「社説」)

 

デモなどの意思表示は民主主義で保障された当然の権利だ。力で抑え込もうとするなら、そうした対応を取る組織は民主主義の敵といえる。

 新基地建設が進む名護市辺野古での抗議活動に参加する人へのアンケートで、参加者のほとんどが警備に当たる機動隊員から何らかの暴力を受けていることが分かった。明らかな人権侵害である。

 県警はアンケート結果を真剣に受け止めてもらいたい。その上で直ちに過剰警備をやめるべきだ。

 アンケートを実施したのは全国の弁護士でつくる日本環境法律家連盟と沖縄ジュゴン「自然の権利」訴訟弁護団だ。辺野古や北部訓練場のヘリ着陸帯建設に抗議する現場では、以前から過剰警備が何度も指摘されてきた。今回は法律家による調査で実態が明らかにされた。弁護団などは「違法性を明らかにして国際機関に働き掛け、日本政府に勧告するよう求める活動につなげたい」と述べている。

 弁護団などが公表したアンケート結果によると、回答207件のうち複数回答で「腕をひねる、ねじる、強くつかむ」行為を受けた人が90人もいた。このうち42人は内出血や捻挫したという。「殴る」「蹴る」も5人ずついた。

 不当な新基地建設に抗議する人々を強制的に排除するだけでも問題だ。さらに強大な権力を持つ警察による暴力行為が常態化している。県警は市民の安全・安心を確保するという警察官の使命を忘れてしまったのか。

 さらに弁護団は市民が身動きできないよう1カ所に隔離する行為も問題視している。

 機動隊のバスなどで市民を囲み、ひどいときには1時間近く排ガスを吸わされる。これに対し弁護団は「法的根拠が不明。監禁行為に当たり、令状などが必要な行為」と厳しく指摘している。

 恐ろしいのは、県警がこうした不当、違法性の高い行為に無自覚であるということだ。県警の重久真毅警備部長は7月6日の県議会総務企画委員会で、警察車両を使った市民の囲い込みについて問われ「排ガスを吸いたくなければ、違法行為をやめていただくことだ」と答弁した。

 法的根拠もなく市民を「監禁」する行為に対して、警備部門の責任者が容認しているのだ。幹部がこうした認識であれば、現場で過剰警備がはびこるのも当然といえる。

 県公安委員会は、県民を代表して警察を管理するだけでなく、県民の意見を警察行政に反映させる役割がある。即刻、過剰警備をやめるよう働き掛けてもらいたい。

 現場に立つ県警が矢面に立たされてはいるが、問題の根源は民意を無視した新基地建設を強行する政府にある。

 国民を危険にさらしてまで造る新基地にどれほどの価値があるのか。民意を無視した政策にどれだけの正当性があるのか。政府は弁護団の指摘を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。

 

沖縄で起きていること(2017年7月22日配信『熊本日日新聞』−「射程」)

 

 拳を振り上げる強面[こわもて]の闘士をイメージしていたのだが、全く違った。物腰は柔らか、声も小さい。語り口も淡々としている。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する運動のリーダーで、沖縄平和運動センターの山城博治議長(64)である。先月末、沖縄を訪ね、話を聞いた。

 山城さんは昨年10月、米軍北部訓練場のヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)建設の抗議活動に伴って有刺鉄線を切断した器物損壊容疑で逮捕され、その後5カ月にわたって長期勾留された。最初の逮捕2カ月前の防衛省職員に対する暴行と公務執行妨害容疑、さらに9カ月前の米軍基地のゲート前にブロックを積んで移設作業を妨げた疑いで2度再逮捕されたためだ。

 山城さんによると、取り調べでは「自白」を強いられ、共謀したとされる仲間の名前を明かすよう求められた。悪性リンパ腫を患うなど健康上の問題も抱えていたが、主治医の診察も十分受けられず、再発の恐怖と向き合った。「一番厳しかったのは家族とも面会できなかったこと。手紙のやりとりもできなかった。勾留は心を折り、気力を奪うシステムだと実感した」と山城さん。

 いずれも通常は長期勾留されない微罪ばかりで、地元選出の国会議員6人が釈放を求める声明を出すなど「運動を萎縮させるための弾圧」との批判が噴出。国際的にも注目され、国連が5月に公表した特別報告者デービット・ケイ氏の対日調査報告が「政府が過度な権力を行使している」と指摘するなどしている。

 山城さんは保釈されたものの、関係者との接触禁止の条件つきで「仲間と会えず、辺野古に行けないのが辛い」と漏らした。それでも「あきらめず、非暴力で戦い続ける」と話した。基地を含む安全保障の問題は日本全土にかかわる。われわれも沖縄で起きていることをもっと知る必要がある。

 

山城さんの訴え(2017年6月18日配信『愛媛新聞』−「地軸」)

 

 本当に日本で起きていることなのか、目を疑った。全国から何台もの大型バスで押し寄せる機動隊。座り込みを続ける住民らの中に分け入り、一人ずつ数人がかりでひきずり出す

▲沖縄の米軍基地前で繰り返される光景だ。フリージャーナリストとして沖縄の最前線を記録し続ける三上智恵さんの映像は、がくぜんとする現実を映し出す

▲二度と戦争の島にしたくないとの住民の切なる思いは届かない。政府は新基地反対を示す選挙結果をことごとく無視、話し合いに応じず、最後の手段の非暴力デモも強制排除する

▲映像には山城博治さんの姿もあった。市民団体「沖縄平和運動センター」を率い、病を押して日々基地の前に立つ。機動隊に車の上から引きずり下ろされ負傷した女性を案じ、やりきれなさに泣き崩れる表情が忘れられない

▲彼は活動中、有刺鉄線を切断した器物破損容疑で逮捕され、5カ月もの間拘束された。家族と会うことも許されず、抗議運動からの離脱を迫られたという。だが「私も沖縄県民も弾圧に屈しません」。「人権のとりで」とされる国連人権理事会で先日、民意の尊重を訴えた

▲沖縄では歌い、踊り、語り合いながら、しなやかな抵抗が続く。活動する人に通勤の車から手を振ることも連帯だと、山城さんは先月今治で講演した。「共謀罪」法が成立、人権や表現の自由侵害は人ごとではない。まずはこの国の現実を知ることから連帯したい。

 

山城氏国連で声明 人権侵害やめ民意尊重を(2017年6月18日配信『琉球新報』−「社説」)

 

 沖縄平和運動センターの山城博治議長がスイス・ジュネーブで開かれた国連人権理事会で声明を発表した。米軍北部訓練場のヘリパッド建設工事を巡る反対運動中に逮捕され、5カ月にわたって長期勾留されたことについて「私は自供と抗議行動からの離脱を迫られた。当局による明らかな人権侵害だ」と訴えた。

 捜査当局が山城氏への取り調べで、抗議行動からの離脱を求めたなら、表現の自由を侵害する越権行為ではないか。逮捕が運動への弾圧であることを裏付けるものだ。

 山城氏が最初に逮捕された容疑は有刺鉄線1本を切断したとする器物損壊罪だ。その後、傷害と公務執行妨害の容疑で再逮捕された。逮捕と同時に、山城議長が所属する平和運動センターの事務所などが捜索を受け、パソコンや記憶装置のUSBメモリーなどが押収された。捜査対象の主眼が運動組織にあると疑わざるを得ない。

 山城氏の長期勾留中、保釈請求は10回以上も却下され、家族の接見も禁止された。この状況に国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが保釈を求めて緊急行動に取り組むなど、国内外の人権団体から批判が相次いだ。

 山城氏が声明を発表した国連人権理事会では、日本政府の代表が反論声明を発表した。長岡寛介公使は「拘束は刑事手続法に従い、裁判所の許可も得た。法に基づく適正なもので、国際法違反はない」と発言している。

 1988年の国連総会で採択された「被拘禁者人権原則」は「拘禁された者または受刑者と外部、特に家族や弁護人との間のコミュニケーションは、数日間以上拒否されてはならない」と定めている。山城氏は家族との接見を5カ月近く認められなかった。明らかに人権原則に反している。長岡公使発言は、日本がこの原則を無視すると世界に宣言したことになる。

 国連はこれまでも、日本の司法制度にたびたび改善を勧告している。長期勾留や家族の接見禁止を認めた日本の裁判所の判断こそが国際社会から見ると異常ではないか。

 言論と表現の自由に関する国連特別報告者のデービッド・ケイ氏も12日に国連人権理事会に提出した報告書で「不均衡な重い罪を課している」と指摘している。人権理事会とは別にジュネーブで開催された沖縄の基地問題と表現の自由に関するシンポジウムでも、ケイ氏は「軽微な罪にこれほどの圧力を与えるのか」と疑問を投げ掛けた。

 新たな米軍基地の建設に反対する人々への圧力が強まる中、名護市辺野古では新基地建設が強行されている。山城氏が声明の最後で呼び掛けた言葉こそ、県民の多くの要求ではないだろうか。

 「私は、日本政府が人権侵害を止め、新しい軍事基地建設に反対する沖縄の人々の民意を尊重することを求めます」

 

(2017年5月30日配信『信濃毎日新聞』−「斜面」)

 

岩盤が侵食されるように人権が削り取られている。海外からそう見えるのだろう。沖縄の山城博治さんが長期拘束されていたことを巡り国連の特別報告者4人が緊急アピールを出した。米軍基地の反対運動の先頭に立っていた人である

   ◆

昨秋、有刺鉄線を切ったなどの微罪で逮捕され5カ月も拘束、家族の面会さえ許されなかった。これらの人権侵害とともに表現や集会の自由を萎縮させる影響にも強い懸念を表明した。日本政府の回答は「主張は完全に間違っている」とけんもほろろだ

   ◆

 ミルトン・マイヤー著「彼らは自由だと思っていた」はナチス時代の人々の内面を記録した。ある言語学者は告白する。ファシズムへの変化は気付かなかった。たとえ違和感を抱いて同僚に話しても「そんなにひどくはない」「人騒がせ」といわれ孤立するから「待つ」しかなかった

   ◆

 日常は大きな変化もなく過ぎたが、言語学者はある日、幼い息子の言葉にがくぜんとする。「ユダヤ人のブタ野郎」。すべてが変わっていたことを知った。ドイツ人がなぜナチスに染まったのか。抵抗したマルチン・ニーメラ牧師の知られた言葉がある

   ◆

 彼らが共産主義を攻撃した時、私は不安を感じつつ共産主義者ではないので何もしなかった。学校、新聞と対象を広げた時もそうだ。教会が攻撃され行動した。しかし、遅すぎた―。岩盤がもろい人権を守るため権力を抑える憲法ができた。ひとごとにしない。これもファシズムの教訓だ。

 

憲法の岐路 強まる監視 拒否する意思示すとき(2017年5月1日配信『信濃毎日新聞』−「社説」)

 

 新たな米軍基地建設のため、海を埋め立てる工事が強行された沖縄・辺野古。基地反対運動の先頭に立ち続けてきた山城博治さんの姿がそこにない。

 昨年秋に逮捕、起訴され、勾留は5カ月にも及んだ。この3月に保釈が認められたものの、事件関係者と接触を禁じる条件がつき、現場に行けない日が続く。

 有刺鉄線を1本切ったことが器物損壊に、工事車両の進入を阻もうとコンクリートブロックを積んだことが威力業務妨害にあたるとされた。逮捕する必要性すら疑わしい事案だと、多くの刑事法学者が指摘している。

 言論・表現の自由は憲法が保障する基本的人権の核を成す。政治的な意見の表明は、民主主義による意思決定の基盤としてとりわけ尊重されなければならない。

 弾圧に道開く共謀罪

 基地建設を強権的に進める政府に抗議するのは何ら不当なことではない。反対運動の中心人物の行動を強制力をもって封じることは弾圧にほかならない。

 沖縄で起きていることに目を凝らすと、政府・与党が今、強引に成立させようとしている共謀罪法案の怖さが際立ってくる。市民運動へのさらに厳しい弾圧に道を開きかねないからだ。

 犯罪の実行に至らなくても、共謀しただけで処罰の対象にする。合意した人すべてに網がかかる。何をもって合意したと判断するかは明確でない。相づちを打つことも合意とみなされ得る。

 誰か1人が準備行為をすれば、他の人を含めて一網打尽にできる―。安倍晋三首相の答弁が、本質を映し出している。

 共謀罪が設けられる犯罪は幅広い。組織的な威力業務妨害も含まれる。原発再稼働や公共事業への抗議運動を含め、政府の方針に反対する人たちが、妨害行為を計画したとして一掃される恐れさえ、ないとは言えない。

 準備行為として挙げた資金・物品の手配や下見は、日常の行動と見分けにくい。事前に共謀を察知しなければ、準備と判断しようがない。当局が目をつけた組織や市民の動向を把握することが、捜査を名目に正当化される。

 欠かせないのが盗聴だ。通信傍受法の対象犯罪に共謀罪を加えることを政府は「検討課題」としている。憲法が保障する「通信の秘密」が有名無実化しかねない。室内に盗聴器を置く会話傍受も、いずれ認められないか心配だ。

 警察の権限が強まり、監視と個人情報の収集が一段と進むことは間違いない。プライバシーが侵され、公権力が内心に踏み入ってくる危険は増す。

 密告を促す規定もある。当局の監視にとどまらず、人と人が互いに監視し合う息苦しさを生み、社会を表情のない人の群れに変えていかないか。

 戦時治安国家の様相

 戦時下、思想・言論の弾圧によって人権が著しく損なわれた反省から、現憲法は刑罰権の乱用を防ぐ詳細な規定を置いた。刑法も刑罰権に縛りをかけることに本来の役割がある。思想でなく行為を罰することは根本原則だ。

 共謀罪はそれを逸脱し、処罰の枠組みを一気に押し広げる。人権を守り、自由を確保するための憲法の骨組み全体が揺らぐ。

 政府が持つ情報を広く覆い隠す特定秘密保護法。集団的自衛権の行使を容認し、憲法の平和主義を変質させた安全保障法制。そして共謀罪。次々と進む法整備によって、日本は再び“戦時治安国家”の様相を帯びていないか。

 その先に安倍政権が目指す改憲がある。自民党の改憲草案は、権利全体に〈公益及び公の秩序に反してはならない〉と枠をはめた。人権の主体である「個人」は、単に「人」と変えられている。

 国民の権利と自由の前に、国家が大きく立ちはだかる。公権力の横暴にさらされても、対抗するためのよりどころはそこにない。

 日本の現在の状況は、昭和3(1928)年に似ている―。九州大名誉教授の内田博文さん(刑事法)が著書で指摘している。31年の満州事変に始まる15年戦争の“前夜”にあたる時期だ。

 今はまだ引き返せる

 25年に制定された治安維持法は3年後のこの年の改定で「目的遂行罪」が設けられた。何であれ、「国体変革」の目的を遂行するための行為と当局が決めつければ取り締まれる。それによって処罰の対象が歯止めなく広がったことは、共謀罪と重なる。

 治安維持法の廃止を含め、「引き返す」選択もあり得たのに、当時の日本は放棄してしまった、と内田さんは述べる。けれど今はまだその道が残っている、と。

 監視が強まり、権力が内心に踏み込んでくるのを黙って認めるわけにはいかない。一人一人が自分の言葉で拒否の意思を示したい。押しとどめる力は、声を積み重ねることでしか生まれない。

 

長期勾留 沖縄事件機に再点検を(2017年4月12日配信『朝日新聞』−「社説」)

 

 基地建設に抗議する活動に参加し、威力業務妨害や傷害の罪で起訴された沖縄平和運動センター議長・山城博治被告の裁判が那覇地裁で開かれている。

 事件が注目されたのは、証拠隠滅のおそれを理由に議長の身柄拘束が昨秋の最初の逮捕から5カ月に及び、「運動つぶしをねらった長期勾留だ」との批判が寄せられたためだ。

 どんな証拠関係になっているのか、詳細はわからない。

 だとしても、罪に問われた行為は警察官や防衛省職員、市民の前でおこなわれ、ビデオ映像も残っている。そんな状況で、どのような隠滅工作が具体的に想定されたのか。それは、起訴内容や情状の核心にどの程度かかわるものだったのか。

 疑問がぬぐえぬまま、先月の初公判後に保釈の決定が出た。それでも検察は異議を唱え、裁判所に退けられたとはいえ、不信をいっそう深めた。

 一般論でいえば、裁判実務は身柄拘束の必要性を慎重に吟味する方向に進んでいる。

 きっかけは裁判員制度だ。

 わかりやすい審理にするためには、争点をはっきりさせ、証拠と主張をしぼり込む必要がある。弁護人と十分に準備できるよう、被告をなるべく自由な境遇におくべきだ――。そんな考えがひろがり、裁判員裁判の対象でない事件や、起訴される前の容疑者段階での身柄の扱いにも影響は及んでいる。

 最高裁も近年、犯行を否認している痴漢の容疑者の勾留を、職権を発動して取り消すなどの決定をあいついで出している。その中で、証拠を隠滅する抽象的な「おそれ」では足りず、現実的可能性があるかどうかを厳格に判断すべきだという考えを示し、注目された。

 もちろんこうした流れがあるからといって、勾留をめぐる問題が解消したわけではない。山城議長の例をふくめ、必要性に疑問のある拘束が数多くおこなわれているとの声は強い。担当する裁判官の意識や個性によって判断の幅が大きいとの指摘もあり、司法に対する疑念を生む原因の一つになっている。

 身柄の拘束は、人を肉体的にも精神的にも追いつめる。「人質司法」という恥ずかしい言葉が示すように、捜査当局がこれを自白を迫る手段に使ってきたのはまぎれもない事実だ。

 裁判官、弁護士、検察官が勉強会を開いて意見をかわすなかで、運用が明らかに変わった例もある。山城議長の事件で勾留のあり方に改めて注目が集まったのを機に、法曹界でさらに議論が深まることを期待したい。

 

山城議長を保釈 新基地阻止への弾みに 信条の自由と尊厳守ろう(2017年3月20日配信『琉球新報』−「社説」)

 

 沖縄の民意と人権を組み敷き、軍事植民地に等しい状態に置こうとする日米政府とその強権行使に抗い、私たちは幾度も新たな地平を切り開いてきた。

 それが沖縄の歴史である。

 困難に直面しながらも、ウチナーンチュの尊厳を懸けて抵抗する意思を示し続け、思想・信条の自由を守る価値をかみしめ、新基地阻止への弾みにしたい。

 名護市辺野古の新基地建設や東村高江のヘリパッド建設への抗議行動を巡り、器物損壊、威力業務妨害などの罪で起訴された沖縄平和運動センターの山城博治議長が初公判翌日の18日、保釈された。

不当性は揺るがず

 昨年10月17日の最初の逮捕から5カ月を超える長期勾留がようやく終わった。弁護団による10回を超える保釈請求はことごとく退けられてきた。前日の保釈決定に対し、那覇地検はこの期に及んで異議を唱えた。福岡高裁那覇支部が「証拠隠滅の恐れはない」として棄却したが、あまりに遅い対応だ。

 微罪であり、勾留の必要性が見いだせない山城氏が「禁錮5カ月」に等しい勾留に追いやられ、国際的な人権団体や刑法学者らが指摘した不当性は揺るがない。

 午後8時ごろ、那覇拘置支所前に姿を見せた山城議長はジャージー姿で、長靴は逮捕時に履いていたものだった。頬がこけ、痩せた体に長期勾留の影響がにじんだが、5カ月間、容疑を認めるよう迫る取り調べに屈しなかった。

 保釈の情報が流れ、支援する市民が100人超駆け付けた。山城議長を中心に保釈を喜ぶカチャーシーの輪が広がった。新基地を拒む行動に文化の力を宿す闘いは山城議長が導いたものである。

 勾留中の山城議長を励ます手紙などが国内外から400通超届いた。際立つ基地押し付けの不条理に対する根強い抵抗が正当性を持ち、沖縄社会に共感を広げていることがこの夜にも示された。

 1956年4月、那覇拘置支所に近い旧沖縄刑務所から瀬長亀次郎氏が出獄した際も多数の市民が出迎えた。60年の歳月を超え、同じような光景が再現された。

 米軍の圧政に抗(あらが)い、狙い撃ちされて投獄された瀬長氏は「瀬長の口を封じても、虐げられた幾百万人の口を封じることはできない」と語った。今の沖縄につながる信念に満ちた言葉である。

 保釈後の記者会見で、山城議長は「広く言えば県民への弾圧だ。裁判で無実と無罪、沖縄の正義を訴え、勝利したい」と語った。

「共謀罪」警戒を

 山城議長は2千円の有刺鉄線を切った器物損壊以外の罪を否認し、無罪を主張している。圧倒的な強権の行使に対する政治的な意思表示の正当性を主張し、検察側に堂々と渡り合ってほしい。

 一方、保釈条件で「事件関係者」との接見が禁止された。抗議参加者が「関係者」とされる可能性があり、山城氏の行動は制約を受ける。だが、現段階で口裏合わせや証拠隠滅の可能性はない。運動の弱体化を狙う安倍政権の意図と背中合わせの理不尽な制約を課すべきではない。

 勾留中の山城議長の書面インタビュー報道を巡り、那覇地検が弁護人の仲介を問題視し、執拗(しつよう)に見解をただしていたことも明らかになった。山城氏の心情を伝える報道を抑え込もうという露骨な意図が見え見えだ。

 被告人との接見や書面インタビューを通し、行き過ぎた権力行使に警鐘を鳴らすのは弁護士の職務の一環であり、報道機関としては正当な取材活動である。

 山城議長の言動を封じ込め、孤立させて検察優位に持ち込もうとする地検の行為は「人質司法」の悪弊を助長する。二度とこのような対応を繰り返してはならない。

 捜査の中で、基地反対運動に携わる関係者やメールの送受信記録を警察が手中にしたとみられる。「共謀罪」を先取りするような権限の乱用がないか、公判を通して目を光らせなければならない。

 

よく県外の人に沖縄タイム「ズ」、と間違えられる(2017年3月20日配信『沖縄タイムス』−「大弦小弦」)

 

 よく県外の人に沖縄タイム「ズ」、と間違えられる。世界的に有名なニューヨークタイム「ズ」は濁点が付く。無理もない。ただ、那覇地検の検事が公文書で間違えたのには少しがっかりした

▼昨年、勾留中の山城博治議長にインタビューした。といっても面会はできない。接見の弁護士に書面で質問を預け、回答を得ることを考え付いた

▼タイム「ズ」などの紙面を見た検事は弁護士に矛先を向け、質問書を送っていた。担当は誰か、接見禁止なのになぜ取り次いだのか−。どこが問題なのかと聞かれても、「考えを聞きたい」と言うだけ。計4回も送るという執拗(しつよう)さだけが際立った

▼接見禁止は本来、証拠隠滅を防ぐためにある。山城議長は事件について「法廷の中で明らかにしていく」と答えただけ。口裏合わせの事実がないことは、紙面が証明している

▼検事が問題視したのは、県民の団結を訴える内容の方だっただろう。聞く者の心を揺さぶる山城議長の言葉を封じようとした。事件関係者との接触禁止という広すぎる保釈条件にも、抗議参加を防ぐ狙いが透ける

▼山城議長の勾留中、手紙を集めて意見広告の形で新聞に載せ、届けた人たちがいた。権力が築く壁を、市民は創意工夫で乗り越える。1人を隔離しても、大勢が続く。山城議長不在の5カ月は、そのことを示した。

 

[山城議長保釈]抵抗の根の深さ示した(2017年3月19日配信『沖縄タイムス』−「社説」)

 

 保釈の知らせを聞き、支援者が急きょ、名護市辺野古など各地から那覇拘置支所前に集まった。

 保釈を心待ちにしていた女性たちは花束を抱え、喜びを満面にたたえ、早い人は4時間も前から、繰り返し歌を歌いながら、今か今かとその瞬間を待った。

 辺野古の新基地建設や北部訓練場へのヘリパッド建設をめぐる抗議行動で威力業務妨害、公務執行妨害、器物損壊などの罪に問われ起訴された沖縄平和運動センターの山城博治議長(64)が18日夜、初公判の翌日に保釈された。

 山城議長は昨年10月17日に逮捕されて以来、約5カ月にわたって、家族との面会も禁じられ、勾留されていた。

 山城議長が門の前に姿を現すと、支援者から一斉に歓声が上がった。「お帰り」「待ってたよー」。

 山城議長は「皆さんと再会できてこんなうれしいことはありません」「感無量でいっぱいです」と何度も感謝の言葉を口にし、目に涙を浮かべながら家族や支援者と抱き合った。

 この歓喜この一体感は普段、よそでは見られない性質のものだ。大衆運動のリーダーに対する信頼を感じさせるものではあるが、それだけではない。

 現地で抗議行動を続ける住民だけでなく、新基地建設に反対する県民が依然として幅広く存在すること。政府の基地政策の理不尽さと反対行動の正当性が多くの県民に共有されていること−それが、あの歓喜あの一体感を生んでいると見るべきだろう。

■    ■

 山城議長の長期勾留に対しては、国際人権団体や県内外の刑法研究者、市民団体などが相次いで即時釈放を求める声明を発表した。

 勾留が認められるのは主に「証拠隠滅のおそれ」があるときだ。だが、山城氏の容疑はいわゆる微罪にあたり、国際人権法に照らしても「証拠隠滅のおそれ」を理由とした長期勾留にはなじまない。

 那覇拘置支所前の広場では早期釈放を求める会の市民団体が、連日のように抗議行動を展開した。那覇拘置支所には国内外から400通を超える激励の手紙やはがきが届いたという。

 福岡高裁那覇支部は18日、保釈を認めた那覇地裁決定を支持し、那覇地検の抗告を棄却したが、国内外のこうした懸念の声が司法を動かしたのである。

 本人に逃亡のおそれがないこと、健康を害していることなどを考えれば、保釈はあまりにも遅すぎた。

■    ■

 長期勾留問題を考える場合、新基地建設やヘリパッド建設がなぜここまでこじれてしまったのか、原点に立ち返って考える必要がある。

 最後まで話し合いによる解決を求めたのは県である。政府は県民が納得できるような負担軽減ではなく、あくまでも新基地建設に固執する。

 最高裁判決を後ろ盾に、しゃにむに基地建設を進める政府に対し、現場では、選挙で示された民意を背景に今も連日、抗議行動が展開されている。本来、裁かれるべきは政府の基地政策である。

 

[山城議長初公判]検察側も保釈を認めよ(2017年3月18日配信『沖縄タイムス』−「社説」)

 

 沖縄平和運動センターの山城博治議長(64)が逮捕されてからちょうど5カ月。長期勾留されているにもかかわらず、那覇地裁204号法廷に元気な姿で現れた。法廷では「まごうことなき不当弾圧だ」と長期勾留を批判するなど不屈の闘志をみせた。

 東村高江のヘリパッド建設や辺野古新基地建設の抗議行動に絡み、三つの事件で逮捕・起訴された山城議長の公判が17日午前、那覇地裁(潮海二郎裁判長)で始まった。

 山城議長が逮捕・起訴されたのは、通常は長期勾留をしない「微罪」としかいいようのない事案ばかりだ。

 県内外の刑事法研究者らが緊急声明で指摘するように、いずれも抗議行動を阻止しようとする機動隊などとの衝突で偶発的に発生した可能性が高く、違法性の程度が極めて低いのである。

 山城議長側は威力業務妨害罪と、公務執行妨害・傷害罪に問われた二つの事件について「(憲法に基づく)正当な表現行為だ」「暴行しておらず、相手は傷害を負っていない」などと無罪を主張した。

 一方で米軍北部訓練場の侵入防止用の有刺鉄線1本(2千円相当)をペンチで切断したとされる器物損壊罪については起訴内容を認め、「やむにやまれず行動を起こしたことの正当性を訴えたい」と強調した。

 政治的表現の自由は民主主義の中でも重要な権利である。選挙で繰り返し示した辺野古新基地反対の民意が無視される中、政治的表現として抵抗権を行使したのである。

■    ■

 山城議長が最初に器物損壊容疑で準現行犯逮捕されたのは昨年10月17日。警察はその後、10カ月前の行動などを捉えて逮捕を繰り返した。

 勾留か保釈かを判断するのは裁判所である。弁護側は那覇地裁に保釈請求を何度も出しているが、認められず、最高裁で特別抗告が棄却されたばかりである。

 地裁は「証拠隠滅の恐れ」を理由に挙げるが、なぜかは明らかにしない。多くの関係者が目撃している事案である。関係箇所の家宅捜索も実施し、起訴の時点で捜査は終わっているはずだ。

 山城議長が保釈された場合、沖縄防衛局職員や警察官らに対し、自分に有利な証言を引き出すような働き掛けをするとでもいうのだろうか。

 国際人権法は恣意(しい)的な逮捕と長期の公判前勾留を禁じており、国際的な流れにも反していることを認識すべきだ。

■    ■

 弁護側は初公判後、保釈申請を那覇地裁に出した。夜になって地裁は山城議長の保釈をようやく認めた。

 だが、検察側は福岡高裁那覇支部へ抗告を検討しているといい、実際に保釈されるかどうかは不明だ。

 国際人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルなど国内外のさまざまな団体が山城議長の早期釈放を求めている。長期勾留の背景に米軍基地建設に抗議する運動を萎縮させる政治的な意図を見るからだ。

 山城議長は悪性リンパ腫の大病を患い、健康上の問題も抱えている。検察側は抗告を取りやめるべきだ。

 

4年前、元官房長官の野中広務氏に(2017年3月18日配信『沖縄タイムス』−「大弦小弦」)

 

 4年前、元官房長官の野中広務氏にインタビューをした時、安倍寛氏という政治家の存在を知った。戦前、反戦を貫き、軍部主導の政治を徹底的に批判した人物。安倍晋三首相の祖父にあたる

▼安倍首相の父で外相などを歴任した晋太郎氏は「俺は岸信介の娘婿ではない。安倍寛の息子なんだ」と誇りにしていたという。晋太郎氏もハト派だったと述懐した野中氏は「安倍さんは寛さんの孫ということを考えてもらいたい」と話していた

▼寛氏は病苦に耐えながら、衆院議員に当選。日米開戦時の東条英機首相への批判の急先鋒(せんぽう)に立った。1942年の総選挙は大政翼賛会の推薦を受けず、特高警察の監視と選挙妨害の中で再選した

▼一方、安倍首相は憲法9条の解釈変更で集団的自衛権を認め、自衛隊の海外派遣を可能にする安全保障関連法を成立させた。平和主義に命をかけた祖父と真逆の政策を推し進めている

▼21日には「共謀罪」と同じ趣旨の「組織犯罪処罰法改正案」を閣議決定する予定だ。市民や労働団体の抗議行動が監視され、弾圧される危険性が高く、「平成の治安維持法」と批判される

▼米軍基地建設に抗議するリーダーを不当に長期勾留し、法の解釈を恣意(しい)的に変えてでも工事を強行する。戦前のような軍部ではなく、米軍に牛耳られた国家総動員体制を危惧する。

 

山城議長ら初公判 歴史見据えた審理を 加害者は日米両政府だ(2017年3月18日配信『琉球新報』−「社説」)

 

 裁かれるべきは沖縄に過重な基地負担を強いる政府の構造的な差別政策である。那覇地裁は新たな基地建設に反対する沖縄の民意に真摯(しんし)に向き合うべきだ。

 辺野古新基地建設、米軍北部訓練場のヘリパッド建設への抗議行動中の行為で起訴された沖縄平和運動センターの山城博治議長は、初公判で器物損壊罪の起訴事実を認めたが、公務執行妨害罪など2件については「不当な弾圧。機動隊の暴力的な市民排除に対するやむにやまれぬ行動であり正当な表現行為」と無罪を主張した。

 弁護団も「処罰は表現の自由を保障する憲法に違反」と訴えた。

民意無視し基地建設

 1995年の米兵による少女乱暴事件を受け日米両政府は「沖縄の基地負担軽減」を名目に、米軍普天間飛行場を名護市辺野古に移設する新基地建設を進めてきた。新基地と一体で運用する北部訓練場内へのヘリパッド建設をも強行したのがこの間の経緯である。

 オスプレイ配備を隠蔽(いんぺい)した新基地建設とヘリパッド建設は米軍基地の強化であり、「負担軽減」が欺瞞(ぎまん)であったことは明白だ。

 翁長雄志知事が約10万票の大差で当選した前回知事選をはじめ名護市長選、衆院、参院の国政選挙の結果は、新基地建設に反対する圧倒的な民意を示した。

 その民意を無視し新基地建設に着手し、ヘリパッド建設が強行されたのである。日本国内の米軍基地を米占領下の沖縄に集中させ、日本復帰後も重圧を押し付け続ける構造的沖縄差別に基づく新基地建設である。

 「これ以上、基地の過重負担は受け入れられない」という県民の訴えは正当だ。選挙が示す民意や非暴力の訴えを踏みにじる基地建設の強行を眼前にし、やむにやまれぬ思いで及んだ山城議長らの行為は正当防衛に等しい。起訴事実も軽微と言っていい。

 那覇地裁は山城議長らの個別の行為だけでなく、歴史的、構造的な背景に目を向け、起訴事実の認定や量刑を斟酌(しんしゃく)すべきだ。

 山城議長、弁護団は無罪主張の根拠に「表現の自由」を挙げている。重要な指摘である。

 訴追された行為は建設工事を暴力的に、また決定的に阻止しようとしたものではない。基地建設現場で集会を開き、座り込むなどの表現活動の延長線上の行為であり、地裁は憲法が保障する「表現の自由」を最大限、配慮してしかるべきだ。

 有刺鉄線を切る、ゲート前にブロックを積むなどの外形的事実のみに着目して起訴事実を認定しては「表現の自由」に基づく市民の抗議行動をも萎縮させることになりかねない。

不当な長期勾留

 山城議長は逮捕からちょうど5カ月目に初公判を迎えた。5カ月もの長期勾留は不当だ。刑事法の学者らの共同声明や国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが即時釈放を要求するなど国際的にも批判を浴びている。

 山城議長が公判で述べた「不当な弾圧」は長期勾留だけでなく、市民の強制排除やテントの撤去など、抗議活動全般への抑圧を批判するものと言っていい。

 アムネスティは「表現の自由、平和的集会などの権利」を指摘するだけでなく「日本政府は県民の強い反対にもかかわらず、米軍基地の建設を続けている」と、基地建設を強行する政府にも批判の矛先を向けている。

 日米両政府は北部訓練場のヘリパッド建設や新基地建設が国際的な批判を受けていることを深刻に受け止めるべきだ。

 抗議する多くの市民が地裁前を埋めた。山城議長らの勾留、起訴にかかわらず新基地建設阻止の活動や訴えはやまない。建設を強行し続ければ、さらに重大な事態を招きかねない。

 県民はこれ以上、国策の犠牲に甘んじることはできない。加害者は日米両政府である。地裁には歴史を見据えた審理を望みたい。

 

今こそ立ち上がろう(2017年3月15日配信『琉球新報』−「金口木舌」)

 

 沖縄平和運動センター議長の山城博治さんが歌う「沖縄 今こそ立ち上がろう」を最後に聴いたのは昨年10月14日のこと。作家の池澤夏樹さんとヘリパッド建設反対運動の拠点である東村高江のテントを訪れた時だ

▼いつものように博治さんは腕を振って歌い、聴く者を鼓舞した。歌詞が胸に迫る。「いい歌だね」と池澤さんはつぶやいた。この歌に込めた沖縄の願いを政府は足蹴にする。3日後、山城さんは逮捕された

▼歌詞にある「戦世を拒み平和をまもるために」「島々の暮らしを守るために」は沖縄が追い求めてきたもの。「沖縄の未来は 沖縄が拓(ひら)く」は苦難の沖縄近現代史に根差した訴えであろう

▼1968年の反体制運動「パリ五月革命」で歌われた「美しき5月のパリ」が原曲である。日本では加藤登紀子さんの詞と歌唱で知られる。山城さんは歌詞を替え、高江や辺野古の闘いを盛り込んだ

▼2015年11月29日、加藤さんは辺野古で山城さんに会う。「勝手に歌詞を替えるのは失礼なこと」とわびる山城さんを「沖縄の歌に替えて受け継いでください」と加藤さんは激励した。そして一緒に歌った

▼捕らわれの身となって5カ月になる山城さんの初公判が迫った。あの声を聴きたい。歌い継ぐべき人に帰ってきてほしい。「今こそ立ち上がろう」と歌う自由を不当に奪うことは許されないのだから。

 

山城氏勾留5カ月 「禁錮」状態から解放せよ(2017年3月14日配信『琉球新報』−「社説」)

 

 日本の刑事司法と人権感覚が、国際社会から厳しく問われている。

 基地新設と機能強化に反対する行動を巡り、公務執行妨害などで逮捕・起訴された沖縄平和運動センターの山城博治議長が13日、妻との接見をようやく果たした。昨年10月17日の最初の逮捕から実に148日がたったが、本人の保釈は退けられたままだ。

 弁護団による10回を超える接見禁止解除の申し立てを退けてきた那覇地裁は10日付で、一部解除を認める決定を出していた。その判断は遅きに失する。「人権の砦(とりで)」であるはずの裁判所の感覚を疑わざるを得ない。

 17日の初公判を待たず、山城議長本人が保釈されねばならない。弁護団が指摘する通り、山城議長の容疑は器物損壊など微罪と形容するしかない。証拠隠滅も逃亡の恐れもないのである。

 辺野古新基地と高江ヘリパッドの建設に抗(あらが)う行動は思想・信条の自由を体現したものだ。山城議長の逮捕と長期勾留は、強権的に新基地建設と基地機能強化を推し進める安倍政権の意に沿わない反対運動を組み敷き、萎縮させる狙いがあることは間違いない。

 がんを患い、体調悪化が懸念される山城議長は12日まで体調を熟知する妻との接見さえ認められなかった。法廷で裁かれる前に、独房で5カ月近い禁錮刑に処せられたに等しい。人権が軽んじられる独裁国家でみられる政治犯への弾圧に近い処遇である。その厳然たる事実は動かない。

 捜査当局の筋書き通りに全ての罪を認めない限り、精神的な支援を遮断して自白を迫るための勾留を続ける「人質司法」の悪弊に裁判所が手を貸した。山城議長の長期勾留はその象徴的なケースとして刑事司法に汚点を残すだろう。

 こうした異常な人権抑圧に対し、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが釈放を求める緊急行動に取り組んでいる。国連人権理事会で、非政府組織の国際人権活動日本委員会が「国際人権規約に違反する」として即時釈放を求める声明を出したばかりだ。

 警察法が定める「不偏不党」「公正中立」「権限濫用の禁止」がないがしろにされ、歯止めをかけるべき裁判所が機能を果たしていない。治安維持を名目に、政治弾圧が繰り広げられた戦前の「警察国家」に戻る瀬戸際に立たされているという危機感を抱く。

 

出演者に囲まれて映画を見るという珍しい体験をした(2017年3月6日配信『沖縄タイムス』−「大弦小弦」)

 

 出演者に囲まれて映画を見るという珍しい体験をした。三上智恵監督の新作「標的の島 風(かじ)かたか」(11日から桜坂劇場で上映)の試写会。客席に座る多くが抗議現場に通う市民で、眼前のスクリーンにも映っている

▼高江、辺野古、宮古、石垣。米軍と自衛隊の基地建設が同時多発で進む。なぜ巨大な権力にあらがえるのか。人々は「世代の責任」を語る

▼子を守る「風かたか(風よけ)」になる、と「童神」を歌う古謝美佐子さん。「てぃんさぐぬ花」が好きな宮古の若い母親は、祖先の平和の心を「心肝に染める」とさらり言う

▼世代をつなぐのは文化である。民俗学を研究する三上監督は石垣のアンガマを例に描く。お盆になれば祖先が帰ってくる。自分も死んだら子孫に会いにいく。無責任に生きられない規範が祭りに宿る

▼「祖先が私たちを思ってくれたと確信できる。だから受け継いだものを汚して子孫に渡すわけにはいかない。その哲学こそ、権力者が持っていない沖縄の強さだと思う」

▼主役の一人、山城博治さんはいまだに勾留されていて試写会に来られなかった。でも、招待された家族の女性が感想を教えてくれた。「あの時なぜ何もしてくれなかったの、と子孫に問われないように。勝つ負けるじゃない。やらなきゃ」。山城さんも、きっと同じことを言うだろう。

 

【余論】司法当局の解釈次第か(2017年3月5日配信『熊本日日新聞』−「射程」)

 

 福岡県警は2月、飲み会で同僚の女性警察官に集団でわいせつ行為をしたとして、強制わいせつ容疑で男性警部補2人を書類送検した。「逃亡や証拠隠滅の恐れがないと判断した」ため逮捕しなかったという。身内に甘い対応ではないか。

 一方、強制わいせつに比べれば軽微とも言える容疑で沖縄県警に逮捕され、勾留が続いているのが沖縄平和運動センターの山城博治議長だ。山城議長は昨年10月、米軍北部訓練場のヘリコプター離着陸帯建設現場近くで有刺鉄線を切断した疑いで逮捕され、別の容疑でその後も2度再逮捕された。3度目は威力業務妨害容疑だが発生したのは昨年1月。いずれも起訴されている。

 刑事訴訟法で勾留は、逃亡や証拠隠滅の恐れがある場合などに限定されているが、保釈請求は那覇地裁で2度棄却され最高裁でも認められなかった。家族との面会も許されていない。山城議長が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する運動を率いるリーダーだけに、長期勾留は運動を抑え付けるための政治弾圧だと、市民団体などは批判する。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、山城議長の健康状態が悪化しているとして早期釈放を訴えるとともに、勾留が長引くことで基地反対運動を萎縮させる恐れがあると指摘している。

 地元だけでなく学者や文化人、海外からも批判の声が上がる中、ある不安が頭をよぎる。政府・与党が今国会で成立を目指す「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案だ。「共謀罪」の構成要件を厳格化したとするが、今回のケースを見れば、司法当局の解釈次第で幅広い運用ができるのではないか

 

沖縄、長期勾留 反基地運動への弾圧だ(2017年2月27日配信『信濃毎日新聞』−「社説」)

 

 山城博治さん。沖縄の米軍基地建設現場で反対運動の先頭に立ってきた人である。基地問題を取り上げた映画で、あるいは実際に現地で姿に接した人は県内にも少なくないだろう。

 その山城さんが現場からいなくなって4カ月余が過ぎる。器物損壊などの疑いで繰り返し逮捕、起訴され、昨年10月以降、勾留が続いているからだ。

 憲法は、人権を守るため、公権力が刑罰権を乱用しないよう定めている。その根本原則を逸脱する不当な長期拘束である。一刻も早く釈放することを求める。

 最初の逮捕容疑は、東村高江のヘリコプター離着陸帯建設現場で侵入防止の有刺鉄線を切ったことだ。その後、公務執行妨害と傷害、さらに名護市辺野古の基地建設現場での威力業務妨害の容疑で、2度にわたり再逮捕された。

 刑事訴訟法は被疑者の勾留を、やむを得ない場合に限り、例外として認めているにすぎない。証拠隠滅や逃亡の恐れがあるときがそれにあたる。山城さんはいずれにも該当しない。逃亡することはあり得ず、証拠も捜査当局が既に収集を終えているはずだ。

 刑事法研究者60人以上が名を連ねた緊急声明は、どの事案も偶発的に起きた可能性が高く、違法性は低いと指摘する。勾留する理由はないとして釈放を求めた。

 器物損壊は有刺鉄線を1本切ったにすぎない。威力業務妨害は、10カ月も前に、工事車両の進入を阻もうとコンクリートブロックを積んだことが持ち出された。長期に及ぶ拘束は、刑罰を上回る苦痛を与えているとの批判もある。

 家族との面会さえ許されていない。弁護側は、保釈や家族の接見を認めるよう何度も申し立ててきたが、那覇地裁はすべて退けた。最高裁への特別抗告も棄却されている。人権を守るべき裁判所がその責任を果たしていない。

 山城さんは2015年に悪性リンパ腫で入院している。健康状態が悪化しないかも心配だ。

 抗議の声は国内外に広がっている。元裁判官らの市民団体や作家らによる署名活動のほか、国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルは、政府や最高検にアピール文を送る緊急行動を呼びかけている。

 過重な基地負担に抗議することは正当な権利だ。政治的な意見の表明は最大限尊重されなければならない。反対運動の中心人物を不当に拘束することは、政治的な弾圧に等しい。民主主義の土台を崩すことは許されない。

 

[反対派議長 長期勾留]人権配慮し即時釈放を(2017年2月25日配信『沖縄タイムス』−「社説」)

 

 個人の尊厳にもかかわる異例の長期勾留だというのに、司法は人権の砦(とりで)としての役割を全うすることができず、政府の追認機関に成り下がっているのではないか。

 そんな疑念をぬぐい去ることができない。 

 4カ月以上も長期勾留が続く山城博治・沖縄平和運動センター議長について、最高裁第3小法廷は、弁護側の特別抗告を棄却し、保釈を認めない決定を下した。

 山城議長は2016年10月17日、高江のヘリパッド建設に対する抗議行動に絡み、有刺鉄線(2000円相当)を切ったとして器物損壊容疑で逮捕された。

 那覇簡裁は20日、那覇地検の勾留請求を却下したが、地検が準抗告し、那覇地裁はその日のうちに勾留を決定。県警は同日、防衛局職員に対する公務執行妨害などの疑いで山城議長を再逮捕した。

 さらに、1月に辺野古のゲート前でブロックを積み上げ、工事を妨げたとして10カ月後の11月になって、威力業務妨害の容疑で再々逮捕した。

 ヘリパッド建設をめぐる機動隊の強権的な市民排除や、無許可の立木伐採などの法令違反に比べれば、非暴力抵抗の防御的な意思表示ばかりである。

 逃亡の恐れがなく、重い病気を患っているにもかかわらず、いまだに家族との接見すら禁じているのは、国際人権法に反する疑いがある。

 いわゆる「人質司法」が批判され、保釈を認めていく方向に司法が変わりつつあるだけに、なおさら、今回の執拗(しつよう)な逮捕劇と勾留は異様だ。

■    ■

 山城博治さんら3人の即時釈放を求める市民らは24日、那覇市の城岳公園で集会を開いた。参加した人々が口にしたのは、運動に対する弾圧への強い危機感である。

 即時釈放を求める会の仲宗根勇さんは、今回の準現行犯逮捕を「捜査権の乱用」だと指摘、「安倍官邸の沖縄つぶしに裁判所が一役も二役も買っている」と批判した。

 高里鈴代さんは「太陽の下、沖縄への人権侵害がこれほどあからさまになったことはない」と長期勾留の不当性を強調した。照屋寛徳衆院議員は、ある雑誌の対談で鹿野政直・早稲田大学名誉教授が語った言葉を紹介した。「前は山城さんの存在が人々をつないでいた。今は、山城さんの不在が人々をつないでいる」

 日米両政府の中には最高裁判決によって「辺野古問題は終わった」との見方が広がっているが、楽観的に過ぎる。

■    ■

 23日の第3次嘉手納爆音訴訟判決で浮かび上がったのは、「騒音被害が漫然と放置されている」と司法が認めているにもかかわらず、米軍機の運航を規制できない、という沖縄の現実である。

 ヘリパッド建設や新基地建設に対する山城議長らの抗議行動は、理不尽な基地負担に対する「ノー」の叫びでもある。対話や交渉を欠いた、ブルドーザーで敷きならすような強硬一辺倒の基地政策は、沖縄の人々の尊厳を傷つけ、激しい怒りの感情を呼び起こし、事態を一層泥沼化させるに違いない。

 

山城議長保釈棄却 「政治弾圧」批判に背く(2017年2月25日配信『琉球新報』−「社説」)

 

 最高裁は長期勾留が続く山城博治沖縄平和運動センター議長の保釈申し立てを退けた。不当な人権侵害を容認する決定であり「人権の砦(とりで)」としての司法の役割を自ら放棄したのに等しい。

 山城議長はがんの病状悪化が危惧されながら家族の面会も禁止されている。拘置所で「家族に会いたい」と訴える言葉に胸が痛む。

 当初の逮捕容疑はヘリパッド建設現場で有刺鉄線を切断した器物損壊の微罪であり、逮捕の必要性すら疑わしい。その後、防衛省職員にけがを負わせた傷害容疑、威力業務妨害容疑が加わり、勾留は4カ月を超す長期に及んでいる。

 いずれも防衛省職員や警察官が目撃しており、客観的な証拠は十分なはずだ。那覇地裁は「証拠隠滅の恐れ」を保釈を認めない理由としているが、説得力はない。

 山城議長の長期勾留がヘリパッドや辺野古新基地建設反対の運動に与えるダメージは大きい。国内の刑法研究者が「正当な理由のない拘禁」「勾留は表現行為への萎縮効果を持つ」と釈放を求める異例の声明を出し、「政治弾圧」の批判が高まっている。

 国際人権団体アムネスティー・インターナショナルも釈放を求め、批判は国際社会に広がっている。保釈を認めない最高裁の決定は国際世論に背くものだ。

 最高裁が長期勾留を容認したことで、基地に反対する市民活動への不当な捜査、逮捕・勾留、政治弾圧が強まることを危惧する。

 元東京高裁裁判長の木谷明弁護士は「裁判官は、検察官の主張に乗せられてしまいがちだ」と実情を明かし、山城議長の長期勾留を「厳しすぎる。精神的な支援を遮断して自白を迫る『人質司法』の手法」と批判する。

 最高裁によると2015年の勾留請求却下率はわずか3・36%にとどまる。勾留申請に対する裁判官の審査が形骸化し、検察の求めるままに拘留を認める検察主導が実態ではないか。

 この間、平和運動センター、ヘリ基地反対協議会など活動拠点が家宅捜索され、パソコンやUSBメモリーが押収された。基地反対運動の事務所に捜索が及ぶのは異例で、関係者や活動の情報を得る狙いがなかったか疑わしい。

 関係者はなお早期保釈に尽力してほしい。同時に「共謀罪」を先取りするような警察、検察の捜査活動にも注意を払う必要がある。

 

[辺野古から 博治さんへ]「沖縄は絶対諦めない」(2017年2月7日配信『沖縄タイムス』−「社説」)

 

 山城博治さん、あなたが辺野古・高江の反対運動に絡む三つの罪で逮捕・起訴され、名護署の留置場や那覇拘置所に長期勾留されてから、6日で113日が経ちました。病を抱える身でありながら、弁護士以外、家族さえ接見できないというあまりにも異常な状態が続いてます。

 私たちはあなたから直接話を聞くことができず、あなたは身柄を拘束され辺野古に行くことができません。ならば、と、こういう手紙形式の社説を思いつきました。

 博治さん。政府は6日朝、名護市辺野古の新基地建設に向け、海上での工事に着手しました。最大で約14トンもある大型コンクリート製ブロックをクレーンで台船から作業船に積み替える作業です。

 翁長雄志知事や稲嶺進名護市長らが建設計画の撤回を求めて訪米した直後に、県と協議もせずに、一方的に作業に踏み切ったのです。

 自民党の二階俊博幹事長でさえ、「沖縄の理解を十分に得られていない状況」だということを認めざるを得ませんでした。

 ブロックは汚濁防止膜が強風などで流されないように固定するためのもので、7日以降、228個のブロックが海底に投下されることになっています。想像するだけで胸がえぐられる思いがします。

 沖縄の切実な声よりも米軍の都合と軍事上の要求が優先され、辺野古への「高機能基地」の建設が目的化してしまっているのです。あの美しい海は、埋め立てればもう元に戻りません。

■    ■

 新基地建設に反対する市民らは、工事車両が基地に入るのを阻止しようと、キャンプ・シュワブのゲート前に座り込み、精一杯の抵抗を試みました。

 博治さんの不在の穴をみんなで埋め合わせているような、決意と危機感の入り交じった空気と言えばいいのでしょうか。

 反対側の歩道で折りたたみ式の簡易イスに座って様子を見守っていたのは島袋文子さん(87)でした。「動悸がしてドクターストップがかかっている」というのに、居ても立ってもいられず、現場に駆け付けたのだそうです。

 機動隊員が一人一人を3、4人がかりでごぼう抜きし始めたため、現場は悲鳴と怒号が飛び交い、騒然とした雰囲気になりました。「暴力はやめろ」「海を壊すな」「沖縄は絶対諦めない」

 驚いたのは文子さんの行動でした。イスから立ち上がって道を渡り、付き添いの女性に両脇を抱えられながら、ひるむことなく機動隊の前に進み出て、抗議の声を上げたのです。「戦争の中から逃げるのはこんなもんじゃないよ」と文子さんは言います。

 沖縄の戦中・戦後の歴史体験に触れることなしに、新基地建設反対運動を深く理解することはできない。翁長知事が政府との協議の中で何度も強調してきたことですが、正面から受け止めることがありません。

 作家の中野重治は、日中戦争前の1928年に発表された「春さきの風」という小説の最後で、こんな言葉を書き付けています。「わたしらは侮辱のなかに生きています」。この言葉は今の沖縄にこそあてはまると言うべきでしょう。

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 問題は、強権的な基地建設だけではありません。国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルは、博治さんの釈放を求める緊急行動を始めました。国連の「被拘禁者人権原則」は、「家族や弁護士との間のコミュニケーションは、数日間以上拒否されてはならない」とうたっています。

 かつて悪性リンパ腫の治療を受け、今も体調が万全でないにもかかわらず、3カ月余も勾留が続き、家族も接見できない状態になっているのです。

 政治的意図に基づく長期勾留であるのは明らかであり、人権侵害の疑いさえある、と言わなければなりません。

 博治さん。拘置所の狭い空間の中では一人ですが、外の世界では決して一人ではありません。県内や国内だけでなく海外からも、多くの励ましの声が届いていることをお伝えしたいと思います。

 

沖縄基地反対リーダーの勾留100日超 釈放求め国内外で抗議の声(2017年1月31日配信『東京新聞』)

 

 沖縄県で米軍基地建設に反対する抗議行動に絡んで逮捕、起訴された沖縄平和運動センターの山城博治(ひろじ)議長(64)の勾留期間が100日を超えた。山城議長は反対派のリーダー格。長引く身柄拘束に、刑事法学者や国際人権団体らが「不当に長い」「政治弾圧だ」と訴え、早期釈放を求める行動が国内外で広がっている。

 県警は昨年10月、米軍北部訓練場(同県東村など)の敷地内の有刺鉄線を切断したとして、器物損壊の疑いで山城議長を現行犯逮捕した。さらに、沖縄防衛局職員の腕をつかんでけがを負わせたとして、傷害などの疑いで3日後に再逮捕。さらに、米軍キャンプ・シュワブ(同県名護市辺野古)のゲート前にブロックを積み上げて工事車両の進入などを妨害したとして、威力業務妨害の疑いで翌月に逮捕した。

 弁護を担当する池宮城紀夫(いけみやぎとしお)弁護士は「威力業務妨害事件は昨年1月に起き、現行犯逮捕できたのに、10カ月もたってから逮捕している。リーダーの山城さんを外に出さないための口実がほしかったからだ」と批判する。

 起訴後の勾留は、裁判所が証拠隠滅や逃亡の恐れがあると認めた場合に行われる。池宮城弁護士はこれまで複数回、保釈を求めてきたが、いずれも証拠隠滅の恐れがあるとして却下された。一連の抗議活動で、山城議長以外にも2人が起訴、勾留されている。

 こうした捜査当局や裁判所の姿勢に対し、刑事法の研究者らは昨年12月、早期釈放を求める緊急声明を発表。当初41人だった賛同者は増え続け、30日現在で64人に上る。

 声明は、事件はいずれも違法性が低いと指摘。根拠として▽切断されたのは2000円相当の有刺鉄線1本▽傷害事件などは、職員の腕などをつかんで揺さぶったことが原因で軽微−などと主張した。また、検察は既に必要な捜査を終えており、証拠隠滅をする恐れもないとした。

 声明の呼び掛け人の一人、東京造形大の前田朗教授は「通常なら身柄拘束の必要がない事案。恣意(しい)的、差別的な対応だ」と話す。

 山城議長の勾留を巡っては、海外識者や日本国際法律家協会などが反対声明を発表し、元裁判官らでつくる市民団体や著名人らが署名を那覇地裁に提出した。今月26日には、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが、即時釈放を呼び掛ける緊急行動を開始。日本で死刑囚以外を対象とした行動は、2004年に東京都立川市内の防衛庁(当時)宿舎内で反戦ビラをまいて逮捕された事件以来という。

 

山城氏拘束3カ月 国際批判招く人権侵害だ(2017年1月19日配信『琉球新報』−「社説」)

 

 那覇地方裁判所、那覇地検は国内外からの「人権侵害」の批判を深刻に受け止めるべきだ。

 米軍北部訓練場のヘリパッドや辺野古新基地建設の反対運動の先頭に立つ山城博治沖縄平和運動センター議長の長期拘束に対する抗議と釈放要求が相次いでいる。

 釈放を要求する国内外4万人の署名が地裁に提出された。英字紙ジャパンタイムズに寄稿があり、「人権後進国」が発信される事態となった。

 山城議長は逮捕後の身体拘束が3カ月に達した。がんを患い病状悪化が懸念されるが、家族の面会すら認められず、靴下の差し入れも拒まれた。政府は「靴下の差し入れが認められない事例はない」と不当な対応を認めている。

 家族によると「昨年12月の血液検査で白血球値が下がり感染症の恐れがあり、腕立て伏せで体を鍛え納豆を口にしている」という。

 山城議長の公判は3月以降とされる。これ以上、勾留が長期化すると、さらに体調の悪化が危惧される。那覇地検、地裁は必要な医療や健康維持に留意した上で、早急な釈放を判断すべきだ。

 ジャパンタイムズに寄稿した米国の弁護士で明治大特任教授のローレンス・レペタ氏は、山城議長の長期拘束を「国際人権法」および、日本も批准する「国際人権規約」に反すると指摘している。

 山城議長はヘリパッド建設現場で有刺鉄線1本を切った器物損壊容疑で逮捕され、別件の逮捕、起訴を含め拘留が長期化している。

 レペタ氏は刑法学者らの指摘を踏まえ「このような微罪が仮に有罪となっても刑務所収監には至らない」と疑問視する。3カ月に及ぶ身体拘束は、判決を上回る刑罰に等しいと見ているのである。

 国内の刑法学者らは個別事件では異例の「釈放要求」声明を出した。共通するのは「必要性のない拘束」であり「政治的表現を制限するもの」との批判である。

 いずれも基地反対運動の中心人物を長期拘束することで「反対運動を萎縮させる」政治弾圧の意図を疑っている。

 レペタ氏は山城議長の長期拘束を国際人権規約に反する「恣意(しい)的な逮捕、拘束」と見なし、「独裁的な国家が反対派を黙らせる常とう手段」になぞらえている。

 山城議長の人権侵害の批判は、警察、検察、司法を従わせ、民意を力でねじ伏せる政府の横暴に向けられていると知るべきだ。

 

辺野古反対派リーダーに靴下差し入れ 主婦の言葉が警察動かす(2017年1月18日配信『東京新聞』)

 

写真14日、沖縄・辺野古での米軍基地建設に抗議する大木晴子さん=東京都新宿区で

 

昨年10〜11月の逮捕後、勾留が続いている沖縄平和運動センターの山城議長は今、東京都世田谷区の主婦大木晴子(おおきせいこ)さん(68)が差し入れた靴下を拘置所で履いている。靴下の差し入れは当初、警察が自殺防止を理由に拒んでいたが、「病後の山城さんには必要」と、大木さんが粘った成果だ。

 山城議長は昨年末、名護署から那覇市内の拘置所に移された。大木さんが同署に出向いたのは移送前の昨年12月20日。山城さんが10月の逮捕後から、留置場で靴下の差し入れを望んでいるとインターネットで知っていた。結んでも首つりに使えない丈の短いのも含めて3種類を用意したが、認められなかった。

 「私も山城さん同様、悪性リンパ腫を患った。免疫力が落ち、指先が冷えて眠れない夜もあります」。食い下がり、署員と30分以上話した。署員は靴下の写真を県警本部に送信し、短いのだけOKが出た。

 沖縄県警は本紙の取材に「靴下自体でなく、丈の長いものは自傷事故を防ぐため認めていない」と回答。だが、靴下の差し入れを3回試みた山城議長の妻は「靴下はダメと言われた。短いのなら大丈夫とか一切言われなかった」と話す。

 大木さんはイラク戦争直前の2003年2月から、土曜の夕方に東京・新宿駅の西口で反戦プラカードを手に立ち続ける。ここは、1969年に当時20歳の大木さんが若者たちとギターを手に反戦ソングを歌い、「フォークゲリラの歌姫」と呼ばれた場所だ。

 「沖縄のおじい、おばあのしわはとても深い。沖縄戦や基地にまつわる極限の苦しみや悲しみを体験したから。犠牲を強いられてきた沖縄の人たちを孤立させてはいけない」

 

山城議長長期勾留 「警察国家」への危機感募る(2017年1月16日配信『琉球新報』−「社説」)

 

 名護市辺野古の新基地建設現場と東村高江のヘリパッド建設現場での行為を巡り、逮捕・起訴された山城博治沖縄平和運動センター議長の拘束が約3カ月に及ぶ。

 今回の長期勾留に関し、政治的な表現の自由を脅かす異常な人権侵害であり、今後、市民運動が標的になりかねないという懸念が国内外で急速に広がっている。

 沖縄の不条理に目を注ぐ海外の有識者、国内の刑法研究者、日本国際法律家協会、76カ国にネットワークを持つ環境NGOが相次いで、山城議長の即時釈放を求める声明を出した。

 作家の落合恵子さんや脚本家の小山内美江子さんらが呼び掛けた釈放要求の署名運動は、3週間で国内外から約1万7千筆を集めた。

 こうしたうねりは、安倍政権下で、民主主義国家、法治主義国家であるはずの日本が急速に「警察国家化」しているという疑念と危機感が深まっている表れだ。

 沖縄の民意に反した基地建設をごり押しされることに異議を唱え、非暴力の抵抗に身を投じた市民を問答無用に抑え込む。さらにリーダーを狙い撃ちにした必要性の乏しい勾留が延々と続いている。

 政治弾圧に等しい長期勾留は即刻やめるべきだ。山城議長は一刻も早く釈放されねばならない。

 山城議長は(1)ヘリパッド建設への抗議中に有刺鉄線1本(2千円相当)を切った器物損壊(2)沖縄防衛局職員に対する公務執行妨害と傷害(3)辺野古新基地建設に抗議した際、ブロックを積み上げた威力業務妨害−の三罪で起訴された。

 第一線の刑法研究者41人以上が名を連ねた異例の緊急声明は、議長の行為は偶発的に発生した可能性が高く、違法性が低いと指摘している。公判維持のための捜査は終わり、証拠隠滅の恐れもない。

 「不当に長い拘禁」は抗議行動を反社会的行為と印象操作する安倍政権の意向が反映していよう。

 がんを抱え、健康状態の悪化が懸念される山城議長は家族との面会や靴下の差し入れが認められなかった。

 裁判所は安倍政権の強権的姿勢を忖度(そんたく)する県警や那覇地検に従い、勾留延長を認めてきた。憲法の番人の役割への自覚はあるのか。

 警察法は、警察が治安維持を名目にして政治弾圧を担い、国を戦争へ導く役割を担った戦前、戦中を猛省して制定された。沖縄で見える刑事司法の変質は「警察国家」への回帰と感じられてならない。

 

軽い容疑で再三逮捕 沖縄反基地リーダー“長期拘留”の異常(2017年1月13日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 沖縄でトンデモないことが起きている。昨年10月に逮捕された反基地運動のカリスマ的リーダーの勾留が、異例の長期に及んでいるのだ。再逮捕や起訴が繰り返され、すでに3カ月近くが経過。これは明らかに、反対運動つぶしの国策捜査に他ならない。

 現在、那覇拘置所に勾留されているのは、沖縄平和運動センターの山城博治議長(64)。昨年10月17日、山城議長は高江での抗議活動中、2000円相当の有刺鉄線1本を切ったとして、器物損壊容疑で準現行犯逮捕された。3日後、傷害と公務執行妨害でも逮捕。沖縄防衛局職員の肩を掴んで揺さぶったという。11月11日に起訴されるが、裁判所はすぐには釈放しなかった。

 さらに県警は、10カ月前の行為を持ち出してまで再々逮捕するムチャクチャ。昨年1月、山城議長は仲間と、辺野古のキャンプ・シュワブのゲート前の路上でコンクリートブロックを積んだ。これが威力業務妨害だというのである。当時、大勢の機動隊や警察官がいたのに、警告も何もなかった。12月に追起訴された後も勾留は続き、家族の接見も許されていない。山城議長の弁護を担当する金高望弁護士は、逮捕自体の不当性を指摘した上でこう続ける。

■家族の接見すら認めず

 「起訴したということは、検察は必要な捜査を終えている。重大事件でない限り、起訴後は釈放が原則です。こんな軽微な事案で勾留を続け、かつ家族の接見すら認めないのは極めて異例です。さらに困ったことに、裁判所がなかなか公判の期日を決定しないのです。恐らく公判は3月以降になってしまう。それまで山城さんを勾留できることになる」

 山城議長は沖縄基地反対運動の象徴的存在だ。

 「沖縄が返還される前、1969年の佐藤首相訪米阻止闘争や翌年の70年安保闘争で、高校生だったヒロジは運動の先頭にいました。沖縄のために闘ってきた第一人者です。人望があって、辺野古の新基地や高江ヘリパッドの反対運動は、ヒロジの求心力があってまとまっています」(山城議長の旧友)

 普天間の辺野古移設を強行する安倍政権にとって、山城議長は目の上のたんこぶなのだろう。あからさまな狙い撃ちなのに大メディアはスルー。それも異常事態。

 

 

山城博治氏の釈放を求める刑事法研究者の緊急声明

 

 日本政府は、民主的に表明される沖縄の民意を国の力で踏みにじっておきながら、日本は法治国家であると豪語する。法律を学び、教える者として無力感におそわれる。まことに残念ながら刑事司法もこれに追随し、非暴力平和の抗議行動を刑法で抑え込もうとしている。平和を守ることが罪になるのは戦時治安法制の特徴である。しかし、今ならば引き返して「法」をとり戻すことができるかもしれないので、刑事法学の観点から、山城氏の逮捕・勾留こそが違法であり、公訴を取消し、山城氏を解放すべきであることを説明する必要があった。

 10日前に海外識者らの「山城博治氏らの釈放を求める声明」が発表され、その後、沖縄県内の二紙が、勾留中の山城氏の「県民団結で苦境打開を」「未来は私たちのもの」とする声を伝えた。日本の刑事法研究者としても、刑事司法の側に不正がある、と直ちに応じておかねばならないと考え、別紙のとおり、「山城博治氏の釈放を求める刑事法研究者の緊急声明」(2016.12.28)を発表する。

呼びかけ人(50音順) 

春日勉(神戸学院大学教授) 中野正剛(沖縄国際大学教授) 本庄武(一橋大学教授) 前田朗(東京造形大学教授) 森川恭剛(琉球大学教授)

賛同人(50音順) 浅田和茂(立命館大学教授) 足立昌勝(関東学院大学名誉教授) 雨宮敬博(宮崎産業経営大学准教授) 生田勝義(立命館大学名誉教授) 石塚伸一(龍谷大学教授) 稲田朗子(高知大学准教授) 内田博文(神戸学院大学教授) 内山真由美(佐賀大学准教授) 梅崎進哉(西南学院大学教授) 大出良知(東京経済大学教授) 大場史朗(大阪経済法科大学准教授) 大藪志保子(久留米大学准教授) 岡田行雄(熊本大学教授) 岡本洋一(熊本大学准教授) 垣花豊順(琉球大学名誉教授) 金尚均(龍谷大学教授) 葛野尋之(一橋大学教授) 黒川亨子(宇都宮大学講師) 斉藤豊治(甲南大学名誉教授) 櫻庭総(山口大学准教授) 佐々木光明(神戸学院大学教授) 笹倉香奈(甲南大学教授) 島岡まな(大阪大学教授) 白井諭(岡山商科大学准教授) 鈴木博康(九州国際大学教授) 陶山二郎(茨城大学准教授) 関哲夫(國學院大学教授) 高倉新喜(山形大学教授) 寺中誠(東京経済大学非常勤講師) 土井政和(九州大学教授) 徳永光(独協大学教授) 豊崎七絵(九州大学教授) 内藤大海(熊本大学准教授) 新倉修(青山学院大学教授) 新村繁文(福島大学特任教授) 平井佐和子(西南学院大学准教授) 平川宗信(名古屋大学名誉教授) 福井厚(京都女子大学教授) 福島至(龍谷大学教授) 福永俊輔(西南学院大学准教授) 保条成宏(福岡教育大学教授) 本田稔(立命館大学教授) 前野育三(関西学院大学名誉教授) 松宮孝明(立命館大学教授) 松本英俊(駒澤大学教授) 三島聡(大阪市立大学教授) 水谷規男(大阪大学教授) 三宅孝之(島根大学特任教授) 宮本弘典(関東学院大学教授) 宗岡嗣郎(久留米大学教授) 村井敏邦(一橋大学名誉教授) 村田和宏(立正大学准教授) 森尾亮(久留米大学教授) 矢野恵美(琉球大学教授) 吉弘光男(久留米大学教授) 他4人

以上 64人(2017/01/18現在)

 

山城博治氏の釈放を求める刑事法研究者の緊急声明

 

沖縄平和運動センターの山城博治議長(64)が、70日間を超えて勾留されている。山城氏は次々に3度逮捕され、起訴された。接見禁止の処分に付され、家族との面会も許されていない山城氏は、弁護士を通して地元2紙の取材に応じ、「翁長県政、全県民が苦境に立たされている」「多くの仲間たちが全力を尽くして阻止行動を行ってきましたが、言い知れない悲しみと無慈悲にも力で抑え込んできた政治権力の暴力に満身の怒りを禁じ得ません」と述べる(沖縄タイムス2016年12月22日、琉球新報同24日)。この長期勾留は、正当な理由のない拘禁であり(憲法34条違反)、速やかに釈放されねばならない。以下にその理由を述べる。

山城氏は、@2016年10月17日、米軍北部訓練場のオスプレイ訓練用ヘリパッド建設に対する抗議行動中、沖縄防衛局職員の設置する侵入防止用フェンス上に張られた有刺鉄線一本を切ったとされ、準現行犯逮捕された。同月20日午後、那覇簡裁は、那覇地検の勾留請求を却下するが、地検が準抗告し、同日夜、那覇地裁が勾留を決定した。これに先立ち、A同日午後4時頃、沖縄県警は、沖縄防衛局職員に対する公務執行妨害と傷害の疑いで逮捕状を執行し、山城氏を再逮捕した。11月11日、山城氏は@とAの件で起訴され、翌12日、保釈請求が却下された(準抗告も棄却、また接見禁止決定に対する準抗告、特別抗告も棄却)。さらに山城氏は、B11月29日、名護市辺野古の新基地建設事業に対する威力業務妨害の疑いでまたしても逮捕され、12月20日、追起訴された。

山城氏は、以上の3件で「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(犯罪の嫌疑)と「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」があるとされて勾留されている(刑訴法60条)。

しかし、まず、犯罪の嫌疑についていえば、以上の3件が、辺野古新基地建設断念とオスプレイ配備撤回を掲げたいわゆる「オール沖縄」の民意を表明する政治的表現行為として行われたことは明らかであり、このような憲法上の権利行為に「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」があるのは、その権利性を上回る優越的利益の侵害が認められた場合だけである。政治的表現行為の自由は、最大限尊重されなければならない。いずれの事件も抗議行動を阻止しようとする機動隊等との衝突で偶発的、不可避的に発生した可能性が高く、違法性の程度の極めて低いものばかりである。すなわち、@で切断されたのは価額2,000円相当の有刺鉄線1本であるにすぎない。Aは、沖縄防衛局職員が、山城氏らに腕や肩をつかまれて揺さぶられるなどしたことで、右上肢打撲を負ったとして被害を届け出たものであり、任意の事情聴取を優先すべき軽微な事案である。そしてBは、10か月も前のことであるが、1月下旬にキャンプ・シュワブのゲート前路上で、工事車両の進入を阻止するために、座り込んでは機動隊員に強制排除されていた非暴力の市民らが、座り込む代わりにコンクリートブロックを積み上げたのであり、車両進入の度にこれも難なく撤去されていた。実に機動隊が配備されたことで、沖縄防衛局の基地建設事業は推進されていたのである。つまり山城氏のしたことは、犯罪であると疑ってかかり、身体拘束できるような行為ではなかったのである。

百歩譲り、仮に嫌疑を認めたとしても、次に、情状事実は罪証隠滅の対象には含まれない、と考えるのが刑事訴訟法学の有力説である。Aの件を除けば、山城氏はあえて事実自体を争おうとはしないだろう。しかも現在の山城氏は起訴後の勾留の状態にある。検察は公判維持のために必要な捜査を終えている。被告人の身体拘束は、裁判所への出頭を確保するための例外中の例外の手段でなければならない。もはや罪証隠滅のおそれを認めることはできない。以上の通り、山城氏を勾留する相当の理由は認められない。

法的に理由のない勾留は違法である。その上で付言すれば、自由刑の科されることの想定できない事案で、そもそも未決拘禁などすべきではない。また、山城氏は健康上の問題を抱えており、身体拘束の継続によって回復不可能な不利益を被るおそれがある。しかも犯罪の嫌疑ありとされたのは憲法上の権利行為であり、勾留の処分は萎縮効果をもつ。したがって比例原則に照らし、山城氏の70日間を超える勾留は相当ではない。以上に鑑みると、山城氏のこれ以上の勾留は「不当に長い拘禁」(刑訴法91条)であると解されねばならない。

山城氏の長期勾留は、従来から問題視されてきた日本の「人質司法」が、在日米軍基地をめぐる日本政府と沖縄県の対立の深まる中で、政治的に問題化したとみられる非常に憂慮すべき事態である。私たちは、刑事法研究者として、これを見過ごすことができない。山城氏を速やかに解放すべきである。

 

 

 

 

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