『結婚したらどうだ』という話でしょ。僕だって言いますよ、平場では。

 

「早く結婚しろ」「子供が産めないのか」

 

「古い人間だから、女は下」

 

 

 女性蔑視のやじ問題に揺れた東京都議会で2014年9月16日、「早く結婚しろ」「子供が産めないのか」とヤジられた塩村文夏都議など超党派議員が参加しているの「男女共同参画社会推進議員連盟」(1999年2月発足。2009年度からは活動を休止)の総会が開かれた。やじ問題を受け、17日の第3回定例会開会を前に約5年ぶりに活動を再開したが、16日の議連総会で会長に就任した野島善司都議(65。前・都議会自民党幹事長)=自民党(北多摩第4〈東久留米市など〉)=が、同議連総会後、のやじ問題に絡み、記者団に、「議会では不規則発言は禁止されている。私生活を論評してはいけない」「発言者個人に対して開かれた場で言ったのが問題。女性と何人かで話をしてて、『「それぞれが議員としての矜持(きょうじ)と自律性を持ってやっていく話だと思う」と述べたうえで、「女性に対して、今回で言えば『結婚したらどうだ』という話でしょ。僕だって言いますよ、平場では」と発言した。また、「平場」の意味については「まったくのプライベートなということ」と説明した。

 

注;平場(ひらば)

1 たいらな場所・土地。

2 「平土間(ひらどま)」に同じ。

3 普通の場。

@競馬などで、特別レースでない一般のレース。

A賭け事で、普通に賭けるだけで、割り増しの賭けをしない場。

B芸妓などの、客と床を共にしない座敷だけの勤め。

C組織などにおいて、幹部や代表者でなく一般の人々の立場。「―からの意見を大切にする」

 

議連の総会に出席した野党会派の女性都議は「発言の本質は、子供がいない人に『子供をつくらないのか』と言ってしまうのと同じ。相手が男女にかかわらず踏み込んではいけない話だと認識しないといけない。そういう(取材の)場所で発言することも理解できない」と語った。

 

発言を受け共産党都議団はこの日、村上幹事長に対し、野島氏に議連会長の辞任を求める文書を提出。「女性の人権を侵害するもので、私的な場であろうと言ってはならない。会長としてふさわしくない」と指摘した。

 

野島都議は「不適切な発言をして大変申し訳ない」と都議会自民党の総会で謝罪した。

 

同会派の村上幹事長は党総会で「この時期にあのような軽々しい発言は私人であろうが、公人であろうが許されるべきことではない」として、野島都議を含めた自民所属の全議員に厳重注意した。

 

問題視する声に対し、野島議員は、17日、「きのうは、個人的な私の言論を聞かれたわけです。そのなかで、人生色々。男も色々、女も色々なんです」あくまで個人的な立場での話だったと釈明した。

 

男女参画議連は17日夕に緊急役員会を開き、対応を協議。野島氏は議連の役員会終了後、記者団に「議連の会長という立場をわきまえずに、個人的な信条を話したのは不適切だった。大変申し訳ない」と語り、会長発言として不適切との認識を示す一方で「個人の政治信条に基づく発言で、内容自体に問題があるかどうかじゃない」「私の個人的な生きざまだ」として撤回しなかった。共産党から会長辞任を求める声があることに対しては「政治家の出処進退は自ら決するもの。(会長として)私が最適任だと自負はしている」とも口にした。

議連幹事長を務める松葉多美子都議(公明党)によると、野島氏はこの日の役員会冒頭で謝罪し、その後の協議で、野島会長を中心にセクハラ防止や男女参画がなぜ進まないかを検証する勉強会、研修会を実施していく方針が決まったという。

 

2014年6月に議場で「早く結婚した方がいい」などのやじを受けたみんなの党の塩村文夏都議は「平場でもセクハラと取れるようなことはだめと認識されてきたところなので残念だ」と記者団に話した。

 

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無神経ないやがらせ(2014年9月18日配信『東京新聞』−「筆洗」)

 

「お前(まえ)もいつまでもこのままでもいられまいし、いずれはお嫁に行ってもらわなきゃならないんだ」「もう行ってもらわないと、お父さんにしたって困るんだよ」。小津安二郎監督の「晩春」(1949年)にこんなせりふがあった

▼原節子さんが初めて出演した小津作品。妻に先立たれた父親(笠智衆)は原さん演ずる娘に結婚を促すが、父親を気にして、決心がつかない

▼このせりふは65年後の2014年では成立しにくいか。結婚への「圧力」は当時に比べ減った。娘は望めば、「いつまでもこのままでいられる」。父親だってかつてほど「困るんだよ」とはならない。そもそも結婚しにくい時代で現代の父親がこれを言えば、娘は怒るだろう

▼必ずしも結婚に帰着しない恋愛や幸せの形もある。結婚の有無は人間の価値や評価とは無関係。少なくともそんな見方をしていこうという時代である

▼東京都議会議員が「結婚したらどうだと僕だって言う」と発言した。批判されて、わびたが、心に敏感であるべき政治家としては世間を見ていない

▼ある程度、親しい女性にならば、つい言ってしまいかねない言葉かもしれない。ある年齢層は心配から口に出すことも知っている。それでもその心配は間違いで、無神経ないやがらせに聞こえてしまう。そのことをあの映画と同じ65歳の男性都議は知っておくべきだった。

 

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