北方領土の日(2月7日)

 

北方領土関係主要年表 竹島の日

 

北方領土における日ロ首脳会談の実現に関する質問主意書と答弁書

 

 

 

日本がロシアに返還を求めている北海道根室半島の沖合にあり、現在ロシア連邦が実効支配している択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島の島々(北方領土・北方四島)に対する国民の関心と理解を更に深め、全国的な北方領土返還運動の一層の推進を図るために制定された記念日。

 

注;歯舞(はぼまい)群島は、北海道根室半島の延長線上3.7kmの沖合から北東方に点在する、貝殻(かいがら)島、水晶(すいしょう)島、秋勇留(あきゆり)島、勇留(ゆり)島、志発(しぼつ)島、多楽(たらく)島などからなる小島。色丹(しこたん)島は、歯舞群島の北東方22kmに位置。択捉(えとろふ)島は、国後(くなしり)島の北東方22.5kmに位置する全長204kmの島(本土四島を除くと日本国内で一番大きな面積を持つ島)。国後島は、根室半島と知床半島に抱かれるような形で、沖合16kmの地点から北東に位置する全長122kmの島(日本国内で二番目に大きな面積を持つ島。なお、三番目は沖縄島〈しま〉)

 

2月7日は、1855(安政元)年に江戸幕府とロシア(当時は帝政ロシア)との間で、当時自然に成立していた択捉島とウルップ島(得撫島)の間に平和的に国境を定めた日露和親条約(下田条約)が結ばれた日。

 

1975年以降、北方領土返還運動の高まりから、青年、婦人、労働の各団体において「北方領土の日制定」を求める決議が次々と行われるようになった。その流れの中の1980年に、国会の衆参両院において「北方領土の日」の設定を含む「北方領土問題の解決促進に関する決議」が全会一致で決議された。これを契機に、全国の都道府県議会や市町村議会、全国知事会、全国市議会議長会、全国市長会、全国町村会などにおいても同様な決議が行われた。

 

 こうした動きを背景に、総務庁(当時。現・総務省)において有識者らからなる「『北方領土の日』に関する懇談会」が設置され、その答申を受け、1981年1月6日に毎年2月7日を「北方領土の日」とすることが閣議了解によって決められた。

この閣議了解では「この日を中心として全国的に集会、講演会、研修会等の行事を行い、この問題に対する国民の関心と理解を更に深め、全国的な北方領土返還運動の一層強力な推進を図る」とされ、毎年、東京都内において青年、婦人、労働などの全国組織からなる実行委員会によって「北方領土返還要求全国大会」が、内閣総理大臣や外務大臣など政府代表、衆参両院代表や各政党代表らの出席のもと開催されている。また、全国各地でも北方領土返還要求運動都道府県民会議によって、都道府県民大会や講演会、パネル展などが企画実施されている。

 

 領土返還要求運動原点の地の北海道・根室市では、2014年2月7日、根室市総合文化会館で根室市と根室管内中標津、別海、羅臼、標津の管内1市4町でつくる協議会の主催の根室管内住民大会が開かれ、元島民ら約1000人が領土の早期返還に向け、四島への思い一つに「島を返せ!」と気勢を上げた。

大会で、同市の長谷川俊輔市長は「日ロ両国に長期政権が維持されつつある今が、領土問題解決に向けた千載一遇のチャンス」と指摘。8日にロシア・ソチで行われる安倍晋三首相とプーチン大統領の日ロ首脳会談で領土交渉が進展することに期待感を示した上で、「根室から領土返還の声を全国に響かせよう」と訴えた。

来賓として出席した岸信夫外務副大臣は「日ロ関係全般の発展を図りながら、平和条約締結に向け、腰を据えて交渉に取り組む」と強調した。

志発島出身の臼田春美さん(79)=市内在住=、国後島2世の白崎賢哉さん(59)=別海町=、水晶島3世の川村綾香さん=根室高3年=らが四島への思いを表明、午後1時からの2部で、管内の中学生の弁論発表や落語家の三笑亭夢之助さん(64)の落語などが行われた。

 

 

さっぽろ雪まつりが開かれている札幌市中央区の大通会場では7日、北方領土復帰期成同盟などでつくる実行委の主催の「2014北方領土フェスティバル」が開かれ、高橋はるみ知事や元島民らが四島の早期返還を訴えた。

高橋知事は、8日にロシア南部ソチで行われる日ロ首脳会談への期待に触れた上で、「領土問題の進展には世論の喚起が不可欠。道民国民全体の啓発を進めたい」とあいさつ。千島歯舞諸島居住者連盟の矢原芳蔵・道央支部長(80)=国後島出身、札幌市=は「元島民の平均年齢は79歳を超え高齢化が進むが、ふるさとの島々が返るまで返還を粘り強く訴えます」と決意を誓った。

会場に設けられた返還要求署名コーナーでは、知事や元島民らが雪像見学を楽しむ観光客らに署名協力を呼び掛けた。

 

 

 

 一方、安倍晋三首相は7日、東京都内で開かれる北方領土返還要求全国大会に出席した後に、政府専用機でソチへ。日本時間8日未明に開幕する冬季五輪の開会式に出席し、同日午後に首脳会談を行った。

 安倍首相は、「日露関係全体の発展を図りつつ、日露間に残された最大の懸案である北方領土問題を最終的に解決し、ロシアとの間で平和条約を締結すべく、交渉に粘り強く取り組んでまいる決意であります」述べた。

 

 

北方領土返還要求全国大会 安倍首相あいさつ要旨

 

 元島民や北方領土返還要求運動関係者をはじめ、全国各地で多くの方々が熱心に返還要求運動を推進し、若い世代が率先して運動を展開していることに心より敬意を表し、感謝を申し上げる。

 昨年4月にわが国の首相として10年ぶりとなるモスクワ公式訪問を行い、昨年10月までにプーチン露大統領と4回の首脳会談を行った。みなさまの思いと熱意を胸に抱き、この会場から羽田空港に直行し、(五輪開催地の)ソチへと向かう。明日、プーチン大統領と5回目の会談に臨む。

 日露関係全体の発展を図りつつ、日露間に残された最大の懸案である北方領土問題を最終的に解決し、ロシアとの間で平和条約を締結すべく交渉に粘り強く取り組む決意だ。プーチン大統領とも一致した通り、戦後68年を経過した今もなお、日露間で平和条約が締結されていないことは異常だ。元島民が高齢になり、早急に北方領土問題の解決を図らなければならないことを肝に銘じて対応する。

 北方領土は国民全体の問題であり、ロシアとの交渉を進展させるためには、政府と国民が一丸となって取り組むことが重要だ。引き続き解決に向け、力強い支援と協力をお願いする。

 

なお、伊豆下田において1855(安政元)年2月7日に締結(調印)された「日魯通好条約」で初めて日ロ両国の国境は、択捉島(エトロプ島)と得撫島(ウルップ島)の間に決められ、択捉島から南は日本の領土とし、得撫島から北のクリル諸島(千島列島)はロシア領として確認され、樺太(サハリン)は今までどおり国境を決めず両国民の混住の地と定められた。

 

 

 

 

 日本はロシアより早く、北方四島(択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島)の存在を知り、多くの日本人がこの地域に渡航するとともに、徐々にこれらの島々の統治を確立した。それ以前に、ロシアの勢力がウルップ島より南にまで及んだことは一度もなかった。日魯通好条約は、当時自然に成立していた択捉島とウルップ島の間の国境をそのまま確認するもので、それ以降も、北方四島がロシアをはじめ外国の領土となったことはなかった。

 

1875年の日露国境の再編をした樺太千島交換条約では、樺太の一部に対する権利を譲り渡し、得撫から占守(しゅむしゅ)に至る18の島千島列島=クリルアイランズ)の領土権を取得した。

 

第2次大戦末期の1945年8月9日、ソ連(当時)は、当時まだ有効であった日ソ中立条約に違反して対日参戦し、日本がポツダム宣言を受諾した後の同年8月28日から9月5日までの間に北方四島のすべてを占領した。当時四島には日本人全体で約1万7千人が生活していたが、ソ連人は1人住んでいなかった。

ソ連は、1946年に四島を一方的に自国領に編入し、1949年までにすべての日本人を強制退去させ、以降、今日に至るまでソ連(ロシア)による実効支配が続いている。

 

1951年9月に締結されたサンフランシスコ平和条約で、日本は、ーツマス条約で獲得した樺太の一部と千島列島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄した。

 

日本政府は、そもそも北方四島は千島列島の中に含まれないうえに、ソ連は、サンフランシスコ平和条約には署名しておらず、同条約上の権利を主張することはできないとして、ロシアに返還を要求している。

 

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安倍晋三首相は14年2月8日午後(日本時間同日夜)、ロシアのプーチン大統領と5回目の首脳会談に臨んだ。

プーチン氏は会談冒頭、「開会式への出席を感謝する。露日間の経済協力が拡大し、2国間で最も難しい問題解決の良い環境ができている」と領土問題解決に前向きな姿勢を強調。首相も「日露関係をさらに発展させるすばらしい会談にしたい」と応じた。

会談の中でプーチン氏は領土問題の解決を含む日ロ平和条約について「日ロ間の最も難しい問題を解決する良い環境ができつつある」と述べたが、一方、「この問題は簡単ではないが、しっかり解決に向けて努力したい」と発言し、肝心の領土問題でロシア側が柔軟な姿勢を示しているわけではなく、具体的な進展はなかった。

首脳会談で、日露次官級協議などで協議を重ねていくことが確認されたが、14年1月31日に都内で開いた次官級協議ではロシアのモルグロフ外務次官は「北方四島は第2次世界大戦の結果、旧ソ連が領有権を獲得した」と原則論を繰り返し、領有の正当性を訴え続けていたという。

首相は会談後の記者会見で、「今まで築き上げてきた(プーチン氏との)個人的な信頼関係を2国間関係の発展という次元へ一段と高めていきたい」と述べ、個人的な信頼関係を生かして北方領土問題の交渉加速に意欲をみせ、領土問題について「最も困難な課題、歴史的課題だからこそ、大統領と課題を解決するという歴史的な使命がある」と述べた。

 

なお、プーチン氏は6日の中露首脳会談で「日本の軍国主義による中国などアジア被害国に対する重大な犯罪行為を忘れることはできない」と述べ、2015年に予定される戦勝70周年の記念行事を共同開催する考えを示したと、中国国営新華社通信は報じた。

 

 

日本選手団の入場行進時に、地面に映し出された日本地図の北海道周辺。雲のようなもので北方領土は見えない

 

2月10日午前、衆院予算委員会で安倍首相は、北方領土問題について「悲願である北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという最終的な結果を得て歴史的な使命を果たすべく、全力を尽くしていきたい」と述べ、在任中の解決に向けた意欲を示した。

 

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「北方領土の日」についてpdf

昭和56年1月6日

閣議了解

1趣旨

北方領土問題に対する国民の関心と理解を更に深め、全国的な北方領土返還運動の一層の推進を図るため「北方領土の日」を設ける。

2期日

毎年2月7日とする。

3行事

北方領土問題関係機関、民間団体等の協力を得て集会、講演会、研修会その他この日の趣旨に沿った行事を全国的に実施するものとする。

 

「北方領土の日」設定の理由書

 

我が国の固有の領土である歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島の北方四島は、戦後35年を経過した今日、なおソ連の不当な占拠下にある。

これら北方領土の一括返還を実現して日ソ平和条約を締結し、両国の友好関係を真に安定した基礎の上に発展させるという政府の基本方針を支える最大の力は、一致した粘り強い国民世論の盛り上がりである。

最近 北方領土問題に対する国民の関心と理解は 着実に深まりつつあるが、全国的観点にたてば、なお一層の啓発を図る必要がある。

このような現状にかんがみ、毎年2月7日を「北方領土の日」とし、この日を中心として全国的に集会、講演会、研修会等の行事を行い、この問題に対する国民の関心と理解を更に深め、全国的な北方領土返還運動の一層強力な推進を図ることといたしたい。

なお、2月7日は、1855年(安政元年12月21日)日魯通好条約が調印された日である。

 

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秋田犬「ゆめ」(2月112日配信『秋田魁新報』−「北斗星」)

 

 その場を瞬時に和ませてくれる存在といえば、やはり動物に勝るものはないらしい。9日付本紙1面の写真を見てあらためてそう思った

▼飼い犬のリードを手に自慢げな男性と、それをにこやかに見詰める男性。休日の夕方にありそうな光景だが、それが領土問題を懸案に抱え、長らく平和条約を結べずにいる日ロの首脳同士の姿なのだから癒やし効果は抜群だ

▼冬季五輪開催地のロシア・ソチで行われた「五輪外交」。プーチン大統領が安倍晋三首相の出迎えに用意したサプライズは、県から一昨年贈られた秋田犬「ゆめ」の同伴だった

▼報道陣のフラッシュにたじろいだところを写されたようだが、2歳近くになったゆめは精悍(せいかん)さを増していた。それでいてくるりと巻いた尾が何とも愛くるしい。かみ癖があるというのはご愛嬌(あいきょう)か

▼海を渡ったのが生後3カ月の時。8カ月後に大統領と雪中で戯れる写真が公開されたが、近況が県民の目に触れるのはそれ以来だ。撮影されたのはくしくも古里大館でアメッコ市、湯沢で犬っこまつりが始まった8日。偶然とはいえ、祭りに花を添えた

▼「告げ口」だとか「孤立化」だとか、およそ外交には不似合いな言葉がはびこり、緊張続きの環日本海で久々にほっとする一幕。「世界中から秋田犬好きを集め、国際サミットを開いてはどうか」。先ごろ来県した在新潟ロシア総領事の提案だ。10月から11月にかけて大統領が来日する。そのタイミングで仕掛けてはいかがか。

 

 

注;秋田犬「ゆめ」=秋田県の佐竹敬久知事が24年7月に、東日本大震災後の支援に対する東北地方からのお礼としてプーチン大統領に贈った雌犬。大統領が日本語の「夢」の発音のまま、ゆめと名付けた。大統領からは返礼としてシベリア猫の「ミール」が贈られ、知事公舎で飼われている。安倍首相」、ロシア語で「ハローシャヤ・サバーカ(いい犬ですね)」と言ってゆめをなでると、大統領は「そうです。でも時々かむんですよ。気を付けて」と応じた。

 佐竹氏は「わざわざモスクワから連れて来たのは、日本に対する友好の配慮。贈ったかいがあった」「和やかに会談できる雰囲気づくりに役立ったのでは」と胸を張った。一方、プーチン大統領が、ゆめが時々かむと発言したことには「犬も猫も愛情表現として時々軽くかみますからね」と釈明した。

 

安倍外交 「戦略的全方位」展開を(2014年2月11日配信『茨城新聞』−「論説」)

 

ソチ冬季五輪開会式に合わせて会談した安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領は、北方領土問題の早期解決と平和条約締結に向けた交渉を加速させる方針をあらためて確認した。また、6月に同じソチで開かれる主要国(G8)首脳会議での会談、10月から11月にかけてのプーチン氏の日本訪問で合意した。

首相は、プーチン氏との「蜜月」関係を十分、アピールできたと言えるだろう。しかし、そのことがかえって昨年末、首相の靖国神社参拝によって緊張感さえ漂うほど悪化した日中、日韓関係の「冷却」ぶりを浮かび上がらせることになった。

中韓両国との冷却状態がさらに長期化すれば、日本を取り巻く安全保障環境や経済にさらなる悪影響が出ることも懸念される。首相は、国益を最大化するために一刻も早く、中韓両国との関係を改善する「戦略的全方位外交」を展開すべきだ。

2次安倍内閣発足後5回目となる首脳会談冒頭、首相は「日ロ関係の新しいページを開くことができた」と強調。プーチン氏も、日本との貿易高の増加に触れた上で「最も難しい問題の解決のために良い環境が出来上がっている」と応じた。

 首脳会談後、記者会見した首相は、北方四島の帰属問題を解決して平和条約を締結する政府の基本方針を示した上で「次の世代に先送りしてはならない。可能な限り早期に解決しなければならない」と決意表明した。会談では、安全保障対話やエネルギー、ロシア極東・シベリア開発への日本の投資など包括的な協力関係強化でも一致している。

 首相側には長い間の懸念となっている北方領土問題の解決に向けて期待感が高まる。かつてないほど良好になりつつあるプーチン氏との蜜月関係は評価したい。しかし、「靖国神社を参拝しても外交的な成果を出せることを証明したい」というような周辺の考えを首相も共有しているのだとすれば極めて問題だ。

 同時期にソチ入りしていた中国の習近平国家主席は、来年を「世界ファシズムと抗日戦争の勝利70周年」と位置付け、プーチン氏に記念行事開催を呼び掛けるなど対日攻勢を強めた。平和の祭典であるべき五輪を舞台に日中が、外交的な駆け引きを繰り広げる結果になったのは残念だった。

 当たり前のことだが、日本外交は日ロ関係だけで成り立っているわけではない。同盟関係にある米国、そして隣国である中韓両国との関係は死活的に重要だ。確かに首相も記者会見で、中国に対して「困難な課題があるからこそ、率直に話し合うべきだ」「日本の対話のドアは常にオープンだ。中国にも同様の姿勢、態度を期待している」と首脳会談を呼びかけた。

 韓国に対してもソチ入りする直前の国会答弁で「対話のドアの中で待っているだけでなく、積極的に出ていき、首脳会談など政治レベルの交流が実現するよう努力を重ねたい」と述べ、朴槿恵大統領との会談に積極的な姿勢を見せた。

しかし、靖国神社参拝でさらに強まった反日感情を抱える中韓両国の態度は極めて硬い。首相にも妙案があるわけでもなく関係改善の兆しは見えない。まず、プーチン氏との蜜月関係構築に見せた首相の熱意を中韓両国の首脳に対しても示してほしい。

 

日ロ首脳会談 「領土」で布石打てたか(2014年2月11日配信『東京新聞』−「社説」)

 

 安倍晋三首相がロシア・ソチ冬季五輪開会式に出席、プーチン大統領との五回目の首脳会談を行った。首脳同士の関係は深まり経済協力拡大でも合意したが北方領土交渉の行方は五里霧中のままだ。

 プーチン氏は昼食を含め安倍氏との会談に二時間を割き、最大限にもてなした。欧米主要国の首脳が同性愛規制などロシアの人権問題を懸念し開会式を欠席する中で、首相が出席したのは、プーチン氏と個人的信頼関係を強固にする絶好の機会ととらえたからだ。

 首相は経済、安全保障など総合的に対ロ関係を拡大する中で、領土交渉を前進させたい考えだ。

 しかしハイペースで続く首脳会談に比べ、北方領土問題を具体的に協議する外務次官級協議は、あまりにスローペースである。ロシア側が「第一ラウンド」と名付ける実質的協議が行われたのは一月末だ。日本側は、あくまで四島の帰属問題をめぐる交渉を求めており、強硬論ではない。一方ロシア側は第二次大戦で北方四島は自国領になったとの原則論に固執する。このままでは「双方が受け入れ可能な解決策」を見いだすのは困難だ。

 膠着(こうちゃく)状態を打破できるのはプーチン氏だけだが「次官級協議の結果について報告を受けている」と述べるだけで、交渉の前提として「色々な分野での交流を進めることが非常に重要だ」と強調し、積極的な姿勢は示さなかった。

 日ロは江戸時代末期の一八五五年二月七日、日露通好条約を調印し択捉島とウルップ島(得撫島)の間に平和裏に国境を画定した。これを記念した七日の「北方領土の日」に行われた北方領土返還要求全国大会では、北方四島から追われ高齢となった旧島民らが故郷への思いを訴えた。北方領土問題は国家主権の問題であると同時に人権問題でもある。

 首相は大会で「次世代に先送りはしない」と解決への決意を表明し、直ちにソチの五輪開会式に向かった。ただロシア側高官は、日本側は北方領土のロシア領有について、具体的な異議を唱えることはなかったと指摘する。首相の行動力は評価するが、旧島民らの思いは果たしてプーチン氏に伝わっただろうか。

 首脳の信頼関係や経済協力などを強化するだけでは、渋るロシアを対日交渉に向かわせることはできないだろう。今年秋のプーチン氏来日までに本格交渉を開始できるか、日本側の正念場だ。

 

日露首脳会談 信頼醸成を「領土」につなげよ(2014年2月11日配信『読売新聞』−「社説」)

 

 首脳間の信頼関係の深まりを、どう成果につなげるかが問われよう。

 ソチ五輪の開会式に出席した安倍首相が、ロシアのプーチン大統領と会談した。第2次安倍内閣の発足後、首脳会談は5回目だ。

 ロシアの人権状況を問題視する欧米の主要国の首脳が開会式を欠席する中、安倍首相はあえて1泊3日の強行日程で訪露した。

 プーチン大統領は、首相に「五輪への配慮に心からお礼したい」と述べ、昼食会を催して厚遇した。互いにファーストネームで呼び合うなど、首脳間の信頼醸成に効果があったと言える。

 会談では、大統領の今秋の来日が決まった。大統領は、最近の日露間の貿易拡大を歓迎し、農業や鉄道、エネルギーを担当する閣僚と関連企業のトップを日本に派遣する意向を示した。

 大統領は、極東・東シベリア開発を「21世紀のロシアの国家的な優先課題」としている。天然ガス開発などの協力は、資源の乏しい日本にとってもプラスだろう。

 問題は、肝心の北方領土交渉が実質的に進まないことだ。

 首相が「交渉を具体的に進めたい」と切り出したのに対し、大統領は「解決に向けてしっかりと努力したい」と応じ、双方の意欲は確認された。だが、政治決断への環境は整っていない。

 先月末、東京で行われた日露の外務次官級協議では、双方の主張が平行線のままだった。ロシアは第2次大戦の結果、北方4島は自国の領土になったとする従来通りの主張を繰り返している。

 日本は、それが歴史的事実に基づかないと強く訴えるべきだ。

 旧ソ連は大戦末期に日ソ中立条約を無視して宣戦布告し、日本のポツダム宣言受諾後、千島列島に侵攻して4島を占領、一方的に自国に編入した。サンフランシスコ講和条約で日本が放棄した千島列島に、北方4島は含まれない。

 ロシアの内政も懸念材料だ。大統領は、国民の不満をかわすため、大衆迎合的な政策を打ち出している。領土問題で譲歩できる政治状況ではないのではないか。

 日露首脳会談に先立ち、大統領は、中国の習近平国家主席と会談し、第2次大戦終結70年の2015年に戦勝祝賀記念行事を共催することを確認した。中露が日本を巡る歴史問題で歩調を合わせている点は警戒すべきだ。

 領土問題を進展させるには、日ロ関係を幅広く強化する一方、プーチン政権の内政・外交の内実も見極めて以下ね

        

安倍外交 戦略的全方位外交が必要(2014年2月11日配信『岐阜新聞』−「社説」)

 

 ソチ冬季五輪開会式に合わせて会談した安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領は、北方領土問題の早期解決と平和条約締結に向けた交渉を加速させる方針をあらためて確認した。また、6月に同じソチで開かれる主要国(G8)首脳会議での会談、10月から11月にかけてのプーチン氏の日本訪問で合意した。

 首相は、プーチン氏との「蜜月」関係を十分、アピールできたと言えるだろう。しかし、そのことがかえって昨年末、首相の靖国神社参拝によって緊張感さえ漂うほど悪化した日中、日韓関係の「冷却」ぶりを浮かび上がらせることになった。

 中韓 両国との冷却状態がさらに長期化すれば、日本を取り巻く安全保障環 境や経済にさらなる悪影響が出ることも懸念される。首相は、国益を最大化するために一刻も早く、中 韓両国との関係を改善する「戦略的全方位外交」を展開すべきだ。

 第2次安倍内閣発足後5回目となる首脳会談冒頭、首相は「日ロ関係の新しいページを開くことができた」と強調。プーチン氏も、日本との貿易高の増加に触れた上で「最も難しい問題の解決のために良い環境が出来上がっている」と応じた。

 首脳会談後、記者会見した首相は、北方四島の帰属問題を解決して平和条約を締結する政府の基本方針を示した上で「次の世代に先送りしてはならない。可能な限り早期に解決しなければならない」と決意表明した。会談では、安全保障対話やエネルギー、ロシア極東・シベリア開発への日本の投資など包括的な協力関係強化でも一致している。

 首相側には長い間の懸念となっている北方領土問題の解決に向けて期待感が高まる。かつてないほど良好になりつつあるプーチン氏との蜜月関係は評価したい。しかし、「靖国神社を参拝しても外交的な成果を出せることを証明したい」というような周辺の考えを首相も共有しているのだとすれば極めて問題だ。

 同時期にソチ入りしていた中国の習近平国家主席は、来年を「世界ファシズムと抗日戦争の勝利70周年」と位置付け、プーチン氏に記念行事開催を呼び掛けるなど対日攻勢を強めた。平和の祭典であるべき五輪を舞台に日中が、外交的な駆け引きを繰り広げる結果になったのは残念だった。

 当たり前のことだが、日本外交は日ロ関係だけで成り立っているわけではない。同盟関係にある米国、そして隣国である中韓両国との関係は死活的に重要だ。

 確かに首相も記者会見で、中国に対して「困難な課題があるからこそ、率直に話し合うべきだ」「日本の対話のドアは常にオープンだ。中国にも同様の姿勢、態度を期待している」と首脳会談を呼びかけた。

 韓国に対してもソチ入りする直前の国会答弁で「対話のドアの中で待っているだけでなく、積極的に出ていき、首脳会談など政治レベルの交流が実現するよう努力を重ねたい」と述べ、朴槿恵大統領との会談に積極的な姿勢を見せた。

 しかし、靖国神社参拝でさらに強まった反日感情を抱える中韓両国の態度は極めて硬い。首相にも妙案があるわけでもなく関係改善の兆しは見えない。まず、プーチン氏との蜜月関係構築に見せた首相の熱意を中韓両国の首脳に対しても示してほしい。

 

【日露首脳会談】「蜜月関係」をどう生かす(2014年2月11日配信『高知新聞』−「社説」)

 

 安倍首相とロシアのプーチン大統領が、首脳会談を行った。1年余り前の第2次安倍政権発足後、5回目の会談は日本の首相としても異例だ。

 会談はソチ冬季五輪の開会式に首相が出席した機会に行われた。ロシアの人権問題に抗議して欧米先進国の首脳が欠席する中で、首相はあえて会談をセットし、ロシア側も異例の大統領公邸での歓迎で応じた。

 中韓両国との首脳会談はめどすら立たず、日米関係も自身の靖国神社参拝で変調をきたす中、トップ外交で「蜜月関係」をアピールできるのがロシアだ。現在のプーチン政権が首相の言う「価値観を共有する国」かはさておき、欧米と一線を画してまで訪ロする意味があると判断したのだろう。

 日ロ両国間の懸案は、もちろん北方領土問題を解決し、日ロ平和条約を締結することにある。両首脳は昨年4月のモスクワでの会談で、停滞していた北方領土交渉の「再スタート」で合意した。

 しかし、具体的な交渉を担う外務次官級協議はようやく2回を数えただけで、首脳会談の5回と比べると密度が薄い。1月末の2回目の協議でも、ロシア側は北方領土について「第2次世界大戦で正当に獲得した領土だ」と、従来の主張を繰り返した。

 こうした事態打開に向け、安倍首相は首脳同士の個人的な信頼関係を深めていこうというのだろう。確かに2人の距離は近づいているように見える。だが領土問題はそれだけで乗り越えられるほど、簡単な問題ではないのも事実だ。

 1997年、当時の橋本首相とエリツィン大統領の間で、「2000年までの平和条約締結」という目標を設定した。このときも両首脳が個人的信頼関係を築いたことが成果につながったとされたが、目標は頓挫している。

 プーチン氏が平和条約締結に言及するのは、石油など資源輸出に依存する自国経済の行き詰まりが背景にあろう。領土問題を終わらせ、日本と経済的、政治的関係を強化することはロシアにとっても有益だ。

 会談ではプーチン氏の秋の訪日でも一致した。トップ同士の関係が良好なうちは、少なくとも大きなトラブルは起きない。安全保障や経済などあらゆる面で、首相は対ロシアと同等のエネルギーを、中韓両国との首脳会談実現に傾けてほしい。

 

「日ロ首脳会談」領土交渉で主導権発揮を(2014年2月11日配信『佐賀新聞』−「論説」)

 

 ソチ冬季五輪に合わせて、安倍晋三首相とプーチン・ロシア大統領による日ロ首脳会談が行われた。秋にプーチン氏が日本を訪問することや、包括的な協力関係の強化で一致した。

 昨年4月の会談では北方領土交渉の再スタートを確認。初の2プラス2(外務・防衛閣僚会議)開催も合意し、安全保障分野にも協力関係を広げた。この1年余りの間に5回の会談を重ねた日ロ首脳は、着実に成果を挙げてきたといえそうだ。

 ただ、首脳同士の信頼関係は深まったものの、北方領土問題ではプーチン氏とロシア外務省との温度差が目立っている。交渉の場である外務次官級協議は2回にとどまり、次回日程も決まっていない。背景にあるのは権益に固執するロシア官僚主義である。

 今回の会談では大統領の訪日のほか極東・シベリア開発への投資促進、安全保障の戦略対話促進などで合意した。領土問題についてのやりとりは不明だが、首相は会見で平和条約の締結を含め「可能な限り早期に解決しなければならない」と述べた。

 プーチン氏は日ロの貿易高が増えていることを挙げて、「2国間関係でも最も難しい問題の解決のために良い環境が出来上がっている」と述べた。領土交渉の継続が了解されているのだろう。

 日本にとってロシアの天然ガスはエネルギー源として魅力的であり、経済と投資協力が基盤になることには異論がない。観光など幅広い民間交流がなければ、国民間の信頼は醸成されないに違いない。

 その一方、平和条約締結が鍵を握っているのも事実だ。戦後70年近く平和条約が結ばれていないのは交流の大きな障壁である。どちらを優先させるかという思惑を抜きに、同時並行で進めなければならないだろう。

 領土交渉については「双方に受け入れ可能な解決策」をつくるという前提に立っている。ロシアは第2次大戦の結果、北方四島が自国領になったという立場を取っている。日本側は4島の日本帰属確認を求め、原則論で一歩も進まない状況にある。

 昨年夏にはロシア紙に両国の元外交担当者による共同論評が掲載された。その柱は平和条約締結後の歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)島返還を明記した「日ソ共同宣言」を基礎に交渉を始め、同時に国後(くなしり)、択捉(えとろふ)島の協議を進めるというもの。現実的な交渉のたたき台を示している。

 両国にとって原則を外れることになるが、プーチン氏は「引き分け」という言葉を使って領土問題解決の意欲を示したことがある。具体的な姿は見通せないものの、次官級協議を着実に進めるため、主導権を発揮してもらいたい。

 昨年春の段階でプーチン氏は訪日の意向や時期を明言しなかった。今回10〜11月という時期も決まり、両首脳の信頼の深まりをうかがわせる。中国、韓国との首脳会談が実現しない中、日ロ首脳の蜜月ぶりは際立っている。

 米国はロシアの人権問題を重視しており、日ロの接近が日米関係にどう響くかも気になる。

 首相はきのうの衆院予算委員会で、北方領土問題解決について「歴史的使命を果たすべく全力を尽くす」と決意を表明した。首脳同士の信頼を基礎に戦略的な外交を積み重ね、具体的な成果を生み出してほしい。

 

日ロ首脳会談 信頼軸に「領土」動かせ(2014年2月10日配信『北海道新聞』−「社説」)

 

ソチ冬季五輪開会式に出席した安倍晋三首相はロシアのプーチン大統領と首脳会談を行い、大統領が今秋日本を訪問することで合意した。

 だが北方領土問題は今回も交渉の加速を確認するにとどまった。

 安倍首相が一昨年末に就任して以来、日ロ首脳会談は5度目だ。両首脳の頻繁な会談は信頼醸成にはつながったが日ロの溝は大きいままだ。

 プーチン氏の来日時に四島返還実現に向けた成果を出すためにも、早急に実質協議を進めるべきである。

 会談の冒頭、プーチン氏は安倍首相の開会式参加について「大変重視しており感謝している」と述べた。

 旧ソ連崩壊後、いばらの道を歩んできたロシアにとって五輪は世界に存在感を示す格好の舞台となった。

 だがロシアで成立した同性愛宣伝禁止法は人権侵害として欧米各国首脳の欠席が相次ぎ、プーチン氏にとって首相の出席は助け舟となった。

 プーチン氏は領土問題の解決に向けて「良い環境が出来上がっている」とも述べた。

 日ロ間の貿易額は昨年、過去最高を記録するなど経済交流はますます活発になっている。外交・安全保障分野でも連携が進む。

 それが領土交渉に結びつかない。

 ラブロフ外相は先月の会見で、第2次世界大戦の結果としてロシアによる北方領土領有の正当性を主張した。東京での次官級協議でも原則論を述べるにとどまった。

 ロシア側は安倍首相の靖国神社参拝を領土問題に絡め、強硬姿勢をあらわにしている。

 プーチン氏と習近平中国国家主席はソチで会談し、来年、第2次大戦の勝利70周年を祝う行事を中ロ共同で開催することで合意したという。中国は歴史問題でロシアと協調し、日本に対抗する構えだ。

 北方四島が日本固有の領土であるという歴史的事実は明白であるが、日中関係の悪化が北方領土問題にも影を落とすのなら、安倍外交の中身が厳しく問われる。

 首相は訪ロの直前、東京都内で行われた北方領土返還要求全国大会に出席し、元島民らを前に「早急に北方領土問題の解決を図らなければならない」と強調した。

 6月のソチでの主要国(G8)首脳会議でも日ロ首脳会談が行われる。首脳同士が腹を割って話し合える環境整備が欠かせない。

 過去に旧ソ連・ロシア大統領が国際会議出席以外で来日した際には、政治文書の作成や具体的提案が議題に上るなど領土問題で大きな節目となる場合が多かった。

 プーチン氏来日の好機を生かす戦略が求められる。

 

首脳の信頼関係どう生かす(2014年2月10日配信『日経新聞』−「社説」)

 

 安倍晋三首相がソチ冬季五輪の開会式に出席し、ホスト役のロシアのプーチン大統領との間で首脳会談を開いた。

 ロシアの人権問題などを理由に欧米の首脳らが開会式を欠席するなか、首相はあえて出席することで、大統領との個人的な信頼関係の強化を優先したといえる。

 第2次安倍内閣の発足後、両首脳による会談はこれで5回目だ。今年も首脳対話は活発になりそうで、今回は6月にソチで開く主要8カ国(G8)首脳会議の際の日ロ会談の実施と、プーチン大統領の今秋の来日が決まった。

 首脳間の頻繁な交流は、日ロ関係全般にもプラスに働く。とくに経済や安全保障分野での協力の厚みが増している。中国の軍事的な台頭や北朝鮮の核問題など、不透明さを増す北東アジア情勢を踏まえれば、安保分野を含めた日ロ関係の底上げは重要だろう。

 気がかりなのは北方領土問題である。プーチン大統領は領土問題の解決と日ロの平和条約の締結に前向きだ。会談でも「日ロ間の最も難しい問題を解決する良い環境ができつつある」と述べた。

 だが目下のところ、領土交渉で目に見える進展はみられない。ロシアは第2次世界大戦の結果、北方四島が自国領になったと主張する。四島の日本への帰属確認を求める日本側との溝は深い。

 両国は領土問題を話しあう外務次官級協議を立ち上げ、双方に受け入れ可能な解決策を探ろうとしているが、先月末の協議でも主張の隔たりが浮き彫りになった。

 経済や安保など日ロ関係全体の発展は、領土交渉の環境整備の意味でも大切だ。しかし領土問題だけが置き去りにされては困る。この問題の解決には大統領の決断が欠かせない。強固になった首脳間の信頼関係を生かし、トップダウンで打開策を探る必要もあろう。

 首相は会談後の記者会見で「可能な限り早期に解決を図っていかなければならない」と決意を表明した。英知を結集して、領土交渉の前進をめざしてほしい。

 

北方領土の日 意義踏まえた返還交渉を(2014年2月8日配信『産経新聞』−「主張」)」

 

 「北方領土の日」の7日、東京で「北方領土返還要求全国大会」が開かれ、安倍晋三首相が「日露関係全体の発展を図りつつ、領土問題を最終的に解決すべく、交渉に粘り強く取り組みたい」との決意を表明した。

 この日の歴史的意義を改めてかみしめ、一致団結して北方四島返還を求める国民的意思を確認したい。

 2月7日は、1855年に日魯(にちろ)通好条約が調印された日だ。条約は、両国国境を択捉(えとろふ)島とウルップ島の間とうたい、北方領土を日本固有の領土と初めて位置づけた。1981年にこの日を北方領土の日と制定したのは、日付に領土返還への希求を込めてのことだ。

 今年の2月7日は特別である。安倍首相は返還要求大会で演説した同じ日、冬季五輪開幕式典に出席し、8日、開催地ソチでロシアのプーチン大統領と会談する。大会での決意表明通り、四島返還を強く説いてもらいたい。

 そもそもソ連は先の大戦の終戦直前、まだ有効だった日ソ中立条約を破って対日参戦し、日本のポツダム宣言受諾後に択捉、国後(くなしり)、色丹(しこたん)、歯舞(はぼまい)の四島を武力で不法占拠した。国際法違反である。

 以来来年で70年になる。元居住者の約1万人が死去し、残る約7160人の平均年齢も79歳を超えた。返還を急がねばならない。

 プーチン大統領は平和条約締結後に色丹、歯舞の2島を引き渡すとした「日ソ共同宣言」(56年)で幕引きを図る姿勢を譲らず、2年前には「引き分け」という柔道用語を使って双方が受け入だが、歴史的経緯を見れば、北方領土問題の解決に引き分けはあり得ない。日本の政界でも面積折半、3島返還論が折々に浮上するが、足並みの乱れはロシア側に付け入る隙を与えるだけだ。

 世論の喚起には領土への理解を深める教育も欠かせない。小中学校の教科書で学習指導要領や解説書に沿って北方領土をわが国固有の領土と取り上げているが、実際の授業で歴史的経過などを含めて教えられているかは疑問だ。

 日本青年会議所の調査で、全国の高校生400人に北方四島などの地図を見せて国境線を引かせたところ、正答は59人だった。

 尖閣、竹島も含めて領土に関する正しい知識を次世代に引き継ぐことは、長期的な国家戦略の根幹を成す。肝に銘じたい。れ可能な妥協をすべきだと唱えた。

 

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北方領土における日ロ首脳会談の実現に関する質問主意書と答弁書

 

北方領土における日ロ首脳会談の実現に関する質問主意書

提出者  鈴木貴子

 

平成二十六年二月二十一日受領

答弁第三五号

  内閣衆質一八六第三五号

  平成二十六年二月二十一日

内閣総理大臣 安倍晋三

       衆議院議長 伊吹文明 殿

衆議院議員鈴木貴子君提出北方領土における日ロ首脳会談の実現に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

 本年二月八日、前日のソチオリンピック開会式に出席した安倍晋三内閣総理大臣は、ロシアのプーチン大統領と首脳会談を行った。安倍総理とプーチン大統領との会談は、第二次安倍内閣発足後すでに五度目になり、両者の間には確固たる信頼関係が築かれつつあり、日ロ間の未解決の問題である北方領土問題の解決に向け、確かな基盤ができつつあると考える。右を踏まえ、質問する。

 

一 今後の北方領土交渉にさらに弾みをつけ、北方領土問題を解決し、日ロ関係を飛躍的に発展させ、極東アジアはじめ世界に貢献する二国間関係をつくるため、未解決の地域、係争地域であると日ロ両国が認めている北方領土、国後島か択捉島においてプーチン大統領と首脳会談を行うべきと考えるが、安倍総理の見解如何。

 

五 四島交流の枠組みにとらわれることなく、日ロ首脳の決断があれば、北方領土で日ロ首脳会談を行うことは可能であると考えるが安倍総理として、国後島、または択捉島で首脳会談を行うことをプーチン大統領に提唱する考えはあるか。

一及び五について

 安倍晋三内閣総理大臣が北方領土を訪問する予定は、現時点ではない。

二 ビザなし交流の枠組みは国務大臣にもあてはまるか。

二について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、「我が国国民の北方領土への訪問について」(平成三年十月二十九日閣議了解及び平成十年四月十七日閣議了解)に従えば、国務大臣は、四島交流の枠組みにより北方領土を訪問することができる。

三 北方領土において日ロ首脳会談を行うことに関し、たとえば平成二十二年十一月十二日に閣議決定された政府答弁書(内閣衆質一七六第一二三号)では「四島交流は現島民との相互理解の増進を目的とした枠組みであり、首脳会談のための訪問をこの枠組みの下で行うことは想定されていない。」との消極的な答弁がなされている。安倍内閣としても、右と同様の認識を有しているか。

四 三の答弁には「想定されていない」とあるが、四島交流の枠組みの下で日ロ首脳会談を行うことは禁じられているか。またはそのような取り決めが存在するのか。

 

右質問する。

三及び四について

 お尋ねの「禁じられている」及び「そのような取り決めが存在する」の意味するところが必ずしも明らかでないが、四島交流は現島民との相互理解の増進を目的とした枠組みであり、首脳会談のための訪問をこの枠組みの下で行うことは想定されていない。

 

 

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